“同世代”がつづる戦争と平和への思い

公開日: 更新日:

 北川直実編「若者から若者への手紙 1945←2015」(ころから 1800円+税)は、終戦当時若者だった15人の戦争体験者に対し、現代の若者15人が手紙で思いをつづるという試み。ともすれば昔話になりかねない戦争の証言が、同世代のリアルな物語として突きつけられる。

 21歳の頃、東京大空襲で被災した清岡美知子さん。炎にまかれながらも一命を取り留めたが、父と姉は空襲の3日後に遺体で発見された。どうして2人を助けられなかったのか、今でも心の傷になっている。東京大空襲訴訟の原告団にもなったが、最高裁は遺族の訴えをすべて退けた。一夜にして膨大な数の命を奪った空襲をなかったことにした国の対応に、美知子さんは失望するしかなかった。

 現在28歳のアイザワ祥子さんは、2年前に結婚したばかり。平穏に暮らす日々だが、美知子さんらの訴えに国が出した「戦争の負担は国民が我慢するもの」という答えを知り、失望を隠せない。日本と、やがて生まれてくる子供の未来に不安を感じるが、自分たちが今、行動を起こさなければ同じ過ちを繰り返しかねないという思いを強くする。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    長瀬智也が国分太一の会見めぐりSNSに“意味深”投稿連発…芸能界への未練と役者復帰の“匂わせ”

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  5. 5

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  3. 8

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  4. 9

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  5. 10

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…