単なる「差別ババア」ではないことに気づく

公開日: 更新日:

「人間の分際」曽野綾子著

 昨今の曽野綾子氏といえば、多くのネットユーザーからは「『出産したら会社辞めろ』と言った婆さん」や「アパルトヘイト容認差別ババア」といったイメージを持たれている。

 それは、2013年以降、曽野氏が紙媒体に書いたものが何度かネットに転載され、読者層が幅広いネットユーザーを激怒させたことに起因する。「紙媒体に閉じこもる」ということが不可能になったことの象徴的なできごとである。

 しかしながら、ネットの炎上というものは、ネガティブな面を探すことだけに躍起になりがち。だからこそ多くのユーザーは曽野氏がバチカン有功十字勲章を受章したり、世界各国でNGO活動を展開したり、吉川英治文化賞や菊池寛賞を受賞し、文化功労者にも選ばれている事実を知らない。

 ただの「口の悪い保守派のババア」「女老害界のラスボス」といった扱いを完全に獲得した感がある。しかし、実際に同氏の文章を読んでみると、含蓄に富んだものが多く、常識的なものがあることに気付く。だからこそ、多数の連載を御年83にして持ち続けているのだろう。私自身、政治的思想はないし、キリスト教徒でもないが、案外曽野氏の文章は昔から納得することが多い。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    横綱・大の里まさかの千秋楽負傷休場に角界から非難の嵐…八角理事長は「遺憾」、舞の海氏も「私なら出場」

  3. 3

    2026年大学入試はどうなる? 注目は公立の長野大と福井県立大、私立は立教大学環境学部

  4. 4

    東山紀之「芸能界復帰」へカウントダウン着々…近影ショットを布石に、スマイル社社長業務の終了発表か

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  2. 7

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  3. 8

    義ノ富士が速攻相撲で横綱・大の里から金星! 学生相撲時代のライバルに送った痛烈メッセージ

  4. 9

    同じマンションで生活を…海老蔵&米倉涼子に復縁の可能性

  5. 10

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択