「オオカミがいないと、なぜウサギが滅びるのか」山田健著

公開日: 更新日:

 地球上の生き物は、もともと食物連鎖による三角形の生態系ピラミッド構造内に存在している。一番上に少数の肉食動物がいて、その下には雑食動物、さらにその下に植食動物、またその下には植物、そのさらに下にはすべての基盤となる土壌という図式だ。しかし何らかの理由で頂点の肉食動物が消えた場合、生態系に何が起こるのか。本書のタイトルは、そこで引き起こされる自然環境の異変を示す。

 人間によってオオカミが消えた日本では、鹿の大繁殖が起こった。結果、草木は食べ尽くされ、草木に依存する虫やその地をすみかとするウサギは次々姿を消した。虫を捕食する鳥も、鳥を捕食する猛禽類も激減。草木のない山の斜面は雨で土壌流失を起こし、ピラミッドの基盤である土壌も失われていく。これは異変の一例にすぎず、世界中で危機的状況が起きている。

 本書は生態系回復のためのアクションを提案。地球を食いつぶす前にいま人間ができることを考えさせてくれる。(集英社インターナショナル1300円+税)



【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る