「ものと人間の文化史172 酒」吉田元著

公開日: 更新日:

 人間が「もの」との関わりを通じて築いてきた暮らしの足跡をたどりながら、文明の基礎を問い直す「ものと人間の文化史」シリーズ第172弾。酒がテーマの本書は、古代の酒の誕生から近世までの人と酒の関わりを、素材による酒の違いや醸造法などの技術面はもちろん、信仰と酒の関わり、文献に登場した酒にも言及。さらには戦国の世から江戸の世、凶作や飢饉の世など世情の移り変わりに伴う酒の扱いの変化、酒の器の変遷にも踏み込んだ酒の文化的側面も解説している。

 具体的には、宮中行事で用いる酒や酢などの醸造食品を造っていた造酒司(みきのつかさ)の酒については、「令集解(りょうのしゅうげ)」「延喜式(えんぎしき)」などの史料から酒の種類ごとにその原料の配合や製成量を割り出しているほか、発掘調査により長岡京に商業的規模の醸造施設があったことが明らかにされていることを紹介。人々を魅了し続けてきた酒の歴史を垣間見せてくれる。

(法政大学出版局 2500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 4

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  5. 5

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  1. 6

    真木よう子「第2子出産」祝福ムードに水を差す…中島裕翔「熱愛報道」の微妙すぎるタイミング

  2. 7

    M-1新王者「たくろう」がネタにした出身大学が注目度爆上がりのワケ…寛容でユーモラスな学長に著名な卒業生ズラリ

  3. 8

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  4. 9

    高市政権の積極財政は「無責任な放漫財政」過去最大122兆円予算案も長期金利上昇で国債利払い爆増

  5. 10

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手