FIFA腐敗はアベランジェ前会長の時代から始まった

公開日: 更新日:

 今年5月27日の早朝、スイスの高級ホテルに警察が踏み込みFIFA(国際サッカー連盟)の幹部が一斉逮捕された。アンドリュー・ジェニングス著、木村博江訳「FIFA 腐敗の全内幕」(文藝春秋 1600円+税)は、この逮捕劇のきっかけをつくったジャーナリストの、15年にもわたる取材の記録だ。

 FIFAの権力の源泉となっているのが、W杯サッカーの全世界に対する放映権や、各国ナショナルチームのユニホームのマーケティング権、大会の観戦チケットの発行権などだ。本書によると、FIFA腐敗のルーツは1974年から24年間、会長を務めたジョアン・アベランジェ前会長の時代にさかのぼるという。アベランジェは、違法賭博や武器売買を資金源にのし上がったリオデジャネイロの大物ギャング、カストル・デ・アンドラーデと朋友の間柄だった。アンドラーデから大きな影響を受けたアベランジェは利権を利用して権力を維持し、FIFAを私物化して国際的犯罪組織のようにつくり変えてしまった。

 アベランジェがスイスのFIFA本部に出張し、故郷ブラジルに帰るとき、アタッシェケースには大量の金の延べ棒が詰め込まれていた。現地の貴金属店によると、少なくとも年に5回、毎回3万ドルほどの買い物をしていたという。長年にわたり異常な量の金塊を運ぶ。それを空港で調べられることはなかったのか。実は、FIFA会長という職権によって、アベランジェは外交パスポートを手に入れていたため、税関はフリーパスだったのだ。そして、彼の忠実な部下だったゼップ・ブラッター現FIFA会長は、その手法を徹底的に学び、組織はますます腐敗の一途をたどっていった。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    カーリング女子フォルティウス快進撃の裏にロコ・ソラーレからの恩恵 ミラノ五輪世界最終予選5連勝

  2. 2

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  5. 5

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  1. 6

    円満か?反旗か? 巨人オコエ電撃退団の舞台裏

  2. 7

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 8

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 9

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  5. 10

    近藤真彦「合宿所」の思い出&武勇伝披露がブーメラン! 性加害の巣窟だったのに…「いつか話す」もスルー