著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

“製本に技あり”のオブジェ本

公開日: 更新日:

「モーション シルエット」かじわらめぐみ、にいじまたつひこ著

 本の設計を仕事にしていても、「立体構造物としての本」と「光」の関係を忘れてしまうことがある。

 例えばページをめくる途中、照明の光が当たれば反対側に「影」が落ちる。光が強ければ強いほど濃い影になり読みづらくなる。この場合、「ライトを調節する」などの「対策」を講じるのはたやすい。しかし想像力を存分に発揮して、光量不足という不利な状況を、本書のような「アートの表現装置」へと転換するのは至難の業だ。

「光が揺れると影も揺れる。これは世界のつつましい横顔です。(谷川俊太郎)」

 2015年度世界で最も美しい本コンクール銅賞受賞。本を開くと、型抜き加工やレーザー加工された「木」「鳥」「お化け」などの「切り絵」が見開き中央に立ち上がる。ここに光を当て、イラスト上の影の「動き」を楽しむ趣向。「モーション・シルエット」たるゆえんである。影の形と絵の組み合わせにより、1見開きで2つの物語が出来上がる。

 今回入手したのは、手製本で制作した「1点もの」を、技術的な改良を加え量産に対応した「普及版」。原著のアイデアやオリジナリティーもそのままに、気負わず楽しめる一冊に仕上がっている。造本の工程の開発も含め、企画から納品にいたる一連の流れが新規の「作品」として結実。うらやましい限りである。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    白鵬のつくづくトホホな短慮ぶり 相撲協会は本気で「宮城野部屋再興」を考えていた 

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  4. 4

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  5. 5

    狭まる維新包囲網…関西で「国保逃れ」追及の動き加速、年明けには永田町にも飛び火確実

  1. 6

    和久田麻由子アナNHK退職で桑子真帆アナ一強体制確立! 「フリー化」封印し局内で出世街道爆走へ

  2. 7

    松田聖子は「45周年」でも露出激減のナゾと現在地 26日にオールナイトニッポンGOLD出演で注目

  3. 8

    田原俊彦「姉妹は塾なし」…苦しい家計を母が支えて山梨県立甲府工業高校土木科を無事卒業

  4. 9

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  5. 10

    実業家でタレントの宮崎麗果に脱税報道 妻と“成り金アピール”元EXILEの黒木啓司の現在と今後