米報道界の実話を描く「スポットライト 世紀のスクープ」

公開日: 更新日:

 ジャーナリズムの世界から気骨が失われて久しい。安倍政権のマスコミいじめのはるか前から、大手報道機関のふがいなさは繰り返し指摘されてきた。

 しかし、だからこそ世間はジャーナリズムには再起を期待もしているのだ……と、そんなことを思わせるのが今週末封切りの「スポットライト 世紀のスクープ」。米報道界の実話を描き、アカデミー賞6部門ノミネートを得た米国映画である。

 舞台は一流紙「ボストン・グローブ」編集部。古都ボストンはアイルランド系が強く、つまりカトリックの本拠地なのだが、そんな街の地元紙がこともあろうにカトリック教会の神父たちの性的スキャンダルを暴露。なんと相当数の聖職者たちが長年、聖歌隊の少年たちにセクハラやレイプをおこなっていたというのだ。

 この話、暴露が同時多発テロの直前だったせいで教会批判に至らなかったのだが、ここにきて米国内で関心が再燃。連日ニュースのトップを占める騒ぎとなった。

 映画では部数の低迷やエース記者の引き抜きに悩む新聞社の現実、教会内外からかけられる露骨な圧力、記者たちの迷いとためらいなどをベタに描く。要は再現ドラマなのだが、その薄っぺらさがないのは“ブンヤ”になりきった役者たちの力によるところが大きい。記者をめざす大学生らの間で前評判というのもうなずける出来なのだ。

 ビル・コヴァッチほか著「ジャーナリズムの原則」(日本経済評論社 1800円+税)は米国の記者養成課程で使われる教科書。「権力に対する独立した監視役」という言葉の本義を改めて噛みしめたい。〈生井英考〉


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  2. 2

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  3. 3

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 4

    「べらぼう」大河歴代ワースト2位ほぼ確定も…蔦重演じ切った横浜流星には“その後”というジンクスあり

  5. 5

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  1. 6

    「台湾有事」発言から1カ月、中国軍機が空自機にレーダー照射…高市首相の“場当たり”に外交・防衛官僚が苦悶

  2. 7

    高市首相の台湾有事発言は意図的だった? 元経産官僚が1年以上前に指摘「恐ろしい予言」がSNSで話題

  3. 8

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  4. 9

    大谷翔平も目を丸くした超豪華キャンプ施設の全貌…村上、岡本、今井にブルージェイズ入りのススメ

  5. 10

    高市政権の「極右化」止まらず…維新が参政党に急接近、さらなる右旋回の“ブースト役”に