著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「ささやかで大きな嘘」(上・下)リアーン・モリアーティ著、和爾桃子訳

公開日: 更新日:

 保育園を舞台にしたママ友小説だが、一気読みの面白さだ。保護者懇親会の日に何かがあったことは最初から明らかにされている。どうやら誰かが亡くなったらしい。しかし、誰が亡くなったのか、子供なのか大人なのか。殺人なのか事故なのか。それはなかなか明かされない。その意味でこれはミステリーだ。

 同時に、ある児童のいじめ疑惑をめぐって対立するママ友たちの生活と意見が、それはもうたっぷりと読ませるから目を離せない。

 マデリーンは別れた夫と後妻の子が自分の娘と同じ保育園に通うことが面白くないし、シングルマザーのジェーンは生活費の捻出に頭を痛めているし、何一つ不自由のない生活を送っているとみんなから思われているセレストは、夫の暴力にひたすら耐えている。そういう3人の生活がひたすら読みやすく、軽快に、そしてシリアスに描かれていく。そういう普通小説の面白さもあふれているのだ。

 この3人はいじめの疑惑をかけられた児童を守る側だが、彼女たちと激しく対立するグループもいて、そちらのリーダーはキャリアウーマンのレナータ。専業主婦、シングルマザー、キャリアウーマンと、保護者もそれぞれ立場が異なるから難しいのである。

 オーストラリアが舞台の小説だが、全米でベストセラーになり、ニコール・キッドマン主演で全7回のテレビドラマが今夏放映されるという。

 日本でテレビドラマ化されるなら、主演は天海祐希だ。(東京創元社 各1100円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵・中井監督が語っていた「部員は全員家族」…今となっては“ブーメラン”な指導方針と哲学の数々

  2. 2

    11歳差、バイセクシュアルを公言…二階堂ふみがカズレーザーにベタ惚れした理由

  3. 3

    中居正広氏は法廷バトルか、泣き寝入りか…「どちらも地獄」の“袋小路生活”と今後

  4. 4

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  5. 5

    二階堂ふみと電撃婚したカズレーザーの超個性派言行録…「頑張らない」をモットーに年間200冊を読破

  1. 6

    開星(島根)野々村直通監督「グラウンドで倒れたら本望?そういうのはない。子供にも失礼ですから」

  2. 7

    最速158キロ健大高崎・石垣元気を独占直撃!「最も関心があるプロ球団はどこですか?」

  3. 8

    風間俊介の“きゅるるん瞳”、庄司浩平人気もうなぎ上り!《BL苦手》も虜にするテレ東深夜ドラマの“沼り力”

  4. 9

    前代未聞! 広陵途中辞退の根底に「甲子園至上主義」…それを助長するNHK、朝日、毎日の罪

  5. 10

    山下美夢有が「素人ゴルファー」の父親の教えでメジャータイトルを取れたワケ