「ジニのパズル」崔実著

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 第59回群像新人文学賞を受賞し、今回の芥川賞候補にもなった。新たな才能の出現と注目される作者(チェシル)のデビュー作。

 主人公のジニは、アメリカ・オレゴン州で絵本作家ステファニーのもとにホームステイしながら、高校に通っている。しかし、退学寸前。そんなジニに、ステファニーが問いかける。
「あなた、ここに来る前に何かあったのかしら」。そしてこう続ける。「あなたは、とても哀しい目をしているわ」

 時は5年前に遡り、舞台は東京へ。日本の小学校を卒業したパク・ジニは、中学から朝鮮学校に入学したが、朝鮮語が分からず、学校生活になじめない。何より、教室に掲げられた金日成、金正日親子の肖像画に強い違和感を抱いた。

 1998年、テポドンが発射された翌日に、制服のチマ・チョゴリで学校に向かったジニは、街で理不尽な暴力を受ける。

 激しい怒りを秘めたまま心を閉ざしたジニは、煩悶の末に立ち上がる。それは、小さくて、とてつもなく大きな、たったひとりの革命だった。

 2つの国のはざまで生きながら、大人に、社会に正当な怒りをぶつけるジニ。強くて、けなげで、傷つきやすい少女の目を通して今を鋭くえぐった作品。(講談社 1300円+税)

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