「上野アンダーグラウンド」本橋信宏著

公開日: 更新日:

 江戸時代から現代にかけて、多くの人を引き付ける吸引力を持った町・上野。博物館や大学がある芸術や文化の聖地としての側面を持つ一方、社会の変動期におけるホームレスや浮浪児の居場所でもあり、都下有数のラブホテル街や風俗街が隣接する場でもある。本書は、そんなカオスな町・上野の不思議な魅力に迫ったルポルタージュだ。

 台東区に位置する上野は、今や1日約18万2000人もの乗客数を数える上野駅を有し、東北・北関東の玄関口としての役割を果たしているが、地形的には上野台地と下町低地に二分されており、縄文時代には上野のすぐ目の前が海だった。そんな昔の水の流れの記憶をなぞるかのように、さまざまな人が上野に流れつく。長年上野とは縁の深かった著者は、西郷さんの銅像前で待ち合わせをして大人の関係を楽しむ人妻、淫靡なアジアエステ界の住人、真夜中の摺鉢山古墳に集う男色たち、路上の似顔絵師や占い師、日雇い作業員をスカウトする手配師などと出会う。

 緻密な取材を通して、表面的な「聖」なる顔と混然一体になった上野の「俗」なる顔がリアルに浮かび上がってくる。

(駒草出版 1500円+税)

【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  2. 2

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 5

    広島・大瀬良は仰天「教えていいって言ってない!」…巨人・戸郷との“球種交換”まさかの顛末

  1. 6

    広島新井監督を悩ます小園海斗のジレンマ…打撃がいいから外せない。でも守るところがない

  2. 7

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 8

    令和ロマンくるまは契約解除、ダウンタウンは配信開始…吉本興業の“二枚舌”に批判殺到

  4. 9

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  5. 10

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か