「がん治療革命『副作用のない抗がん剤』の誕生」奥野修司著

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 がん患者の8割以上が受けている抗がん剤治療だが、猛烈な副作用ががん以上に命を縮める例も少なくない。しかし今、副作用のない画期的な抗がん剤による治療が始まっている。熊本大学の前田浩名誉教授が開発した新薬で、その名を「P-THP」という。

 腫瘍を取り巻く血管には、正常な血管にはない大きな穴が開いている点に着目し、この穴を通り抜けて腫瘍だけに薬剤が集まるよう、既存の抗がん剤を高分子ポリマーとつなげたものだ。本書では治療を受けた30人の患者を取材しているが、28人が「副作用がなかった」と証言しており、残りの2人に関しても発熱と胸がチクチクしたという程度で、七転八倒するような副作用はいずれの患者にも起こらなかったという。

 抗がん剤による副作用がないと、手術や重粒子線治療などが同時に併用できる。現状では体力の回復を待たなければならないが、副作用のないP-THPならその必要がない。末期がんから生還した患者の治療例なども紹介。抗がん剤に殺されない時代が、すぐそこまで来ている。(文藝春秋 1500円+税)


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