日本は既に「戦争ができる国」になっている。

公開日: 更新日:

「戦争責任は何処に誰にあるか」山本七平著

 イザヤ・ベンダサン名義の「日本人とユダヤ人」で知られた著者が亡くなって四半世紀。しかし70年代から亡くなる直前まで日本の戦争責任問題については幾度も論文を発表してきた。本書はその初の単行本化。

 昭和天皇崩御のあとに書かれた第2章では、日本人が天皇に抱くイメージと天皇自身の「立憲君主」の自己規定にはずれがあると指摘。日本の天皇は律令時代から太政大臣の決裁を認可するだけになっていた。つまり時の政治が院政であれ幕政であれ西洋的な立憲君主制であれ、政治の外に安全に身を置く仕組みがあった。著者は昭和天皇が明確にこれを意識し、明治憲法の「立憲君主」を順守したがゆえに「御親政」を唱えた二・二六の若手将校たちに激怒し、天皇の座を揺るがせにしないために「象徴」の地位を受け入れたと示唆。戦争責任問題にも、「生前退位」問題にも大いに関係しそうな論考である。(さくら舎 1600円+税)

【連載】NEWSを読み解く今週のキーワード

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  2. 2

    ヤクルト村上宗隆の「メジャー契約金」は何億円?

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希もようやく危機感…ロッテ時代の逃げ癖、図々しさは通用しないと身に染みた?

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    吉沢亮「国宝」150億円突破も手放しで喜べない…堺雅人“半沢直樹ブーム”と似て非なるギャラ高騰の行方

  1. 6

    「SIAM SHADE」DAITAがメンバー4人を提訴報道…人気バンドを巡る金銭問題と、「GLAY」は別格のワケ

  2. 7

    日本ハム最年長レジェンド宮西尚生も“完オチ”…ますます破壊力増す「新庄のDM」

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    ドジャース佐々木朗希にリリーバーとしての“重大欠陥”…大谷とは真逆の「自己チューぶり」が焦点に

  5. 10

    《あの方のこと?》ラルクhydeの「太っていくロックアーティストになりたくない」発言が物議