鉄面皮の内側 プーチンのしたたかな政治手腕を精査

公開日: 更新日:

「プーチン―内政的考察」木村汎著

トランプと意気投合する一方、安倍総理を手玉にとる外交巧者プーチン。その鉄面皮の内側を暴く――。

 わが国のソ連・ロシア研究の大家が精魂を傾けた畢生(ひっせい)のプーチン論。その第1部は既に「プーチン-人間的考察」として出版。その第2部に当たる本書はプーチノクラシー(プーチン統治)の全貌を明らかにする野心作だ。

 既に16年以上も実質的に続いているプーチン政権は、米大統領2期8年と比べても2倍以上になる。ゴルバチョフのペレストロイカ(立て直し)時代を東独で過ごしたプーチンは西欧並みの「新思考外交」を標榜したゴルバチョフ流の欠点をつぶさに目撃。これが「下からの人民反乱への嫌悪」を醸成したという。

 皇帝型の統治を実現するために軍やメディアとの密接な関係に配慮するプーチンだが、軍の操縦のために送り込んだ盟友イワノフはいまや軍の言いなり。他方、14年以来の原油安、ルーブル安、米欧による経済制裁の三重苦に喘ぎながらも、ウクライナやシリアでの華々しい戦果をテレビで大宣伝することで庶民の人気は衰えない。

 中産階級が物質的な豊かさを超えて政治的な発言力を強めることを警戒するプーチン。そのしたたかな政治手腕を精査する本書は全16章合計600ページ以上になる大冊だ。(藤原書店 5500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    もしやり直せるなら、入学しない…暴力に翻弄されたPL学園野球部の事実上の廃部状態に思うこと

  2. 2

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  3. 3

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  4. 4

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???

  5. 5

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  1. 6

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  2. 7

    JLPGA専務理事内定が人知れず“降格”に急転!背景に“不適切発言”疑惑と見え隠れする隠蔽体質

  3. 8

    「俳優座」の精神を反故にした無茶苦茶な日本の文化行政

  4. 9

    (72)寅さんをやり込めた、とっておきの「博さん語録」

  5. 10

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動