4つの「ゼロデイ」で完璧なサイバー攻撃

公開日: 更新日:

 国家レベルで繰り広げられ、国の命運を左右するほどの大きな力となっているサイバー攻撃。その実態を明らかにしていくのが、山田敏弘著「ゼロデイ」(文藝春秋 1500円+税)だ。

 トランプが勝利した昨年の米大統領選挙も、サイバー攻撃の脅威を新たなステージに導くものだった。大統領選のさなかに民主党がサイバー攻撃を受け、膨大な電子メールが流出。このうち1万9000件以上が内部告発サイト「ウィキリークス」に公表され、共和党に有利な展開となってしまった。

 問題は、この攻撃がロシアの仕業だったことだ。クリントンがプーチンを敵視していた一方、トランプはロシアにとって都合のいい発言を繰り返しており、くみしやすい存在だった。米大統領選挙は、サイバー攻撃ひとつで敵対国家の世論を操作し、政権や内政に影響力を行使できることを世に知らしめた結果となったわけだ。

 サイバー攻撃では、敵国のインフラを物理的に破壊することも可能になっている。2009年末、イラン中部にあるナタンズ核燃料施設で、稼働中だった遠心分離機が突如制御不能となり、大破した。

 実行犯は、米国とイスラエル。「スタックスネット」と呼ばれる、史上初の“デジタル兵器”による遠隔地からの破壊活動だった。

 本書では、スタックスネットがブッシュ、オバマの両政権下で秘密裏に開発された経緯や、オバマ政権下での実行の様子などが克明につづられている。

 今、サイバー攻撃の鍵を握っているのが、「ゼロデイ」であるという。これは、まだ一般には気づかれていないプログラム上の欠陥を指し、ゼロデイを駆使すれば、どんなネットワークにもたやすく攻撃を仕掛けることができる。スタックスネットも、このゼロデイを少なくとも4つ駆使することで、完璧な破壊攻撃を達成できたといわれている。

 現在ゼロデイは闇で売買され、各国のサイバー機関が億単位の資金を投じて購入しているという。原発をはじめ、日本のインフラも、いつサイバー攻撃を受けてもおかしくない。独自に防御する体制づくりが急務だ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木麟太郎をドラフト指名する日本プロ球団の勝算…メジャーの評価は“激辛”、セDH制採用も後押し

  2. 2

    日本ハム新庄監督がドラフト会議出席に気乗りしないワケ…ソフトB小久保監督は欠席表明

  3. 3

    ヤクルト青木“GM”が主導したバランスドラフトの成否…今後はチーム編成を完全掌握へ

  4. 4

    吉村代表こそ「ホント適当なんだな」…衆院議席3分の1が比例復活の維新がゾンビ議員削減と訴える大ボケ

  5. 5

    吉村代表は連日“ドヤ顔”、党内にも高揚感漂うが…維新幹部から早くも「連立離脱論」噴出のワケ

  1. 6

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  2. 7

    ブルージェイズ知将が温めるワールドシリーズ「大谷封じ」の秘策…ドジャース連覇は一筋縄ではいかず

  3. 8

    高市政権は「安倍イタコ政権」か? 防衛費増額、武器輸出三原則無視、社会保障改悪…アベ政治の悪夢復活

  4. 9

    今秋ドラフトは不作!1位指名の事前公表がわずか3球団どまりのウラ側

  5. 10

    亀梨和也気になる体調不良と酒グセ、田中みな実との結婚…旧ジャニーズ退所後の順風満帆に落とし穴