「孤独のすすめ」五木寛之著
65歳以上の高齢者の割合が4分の1を超えるという超高齢化社会に突入した日本。こうした時代を生きるには、年をとってもなるべく積極的に他人とコミュニケーションをとり、体を動かし、いろいろなことに好奇心を持つ……といったことを称揚することが多い。
しかし、年をとれば体力も気力も衰える。そういう人に向かって「ポジティブに生きろ」などというのは、残酷なことではないか、と著者は言う。
むしろ、孤立を恐れず、孤独だからこそ充実した生き方ができると実感する。あるいは減速して生きる、それも無理にブレーキをかけるのではなく、精神活動は高めながら自然にスピードを制御する、そうした生き方をすることが現代人のテーマではないか、と。
このまま高齢化が進むと若者と老人との階級対立が生じ、「嫌老感」が蔓延する恐れも出てくる。それを見据えながら、いかに「嫌老」から「賢老」へ転換していくのか。「孤独」「減速」「下山」「回想」といった言葉をキーワードに、超高齢化社会を生き抜くための知恵が開陳されている。(中央公論新社 740円+税)