「孤独のすすめ」五木寛之著

公開日: 更新日:

 65歳以上の高齢者の割合が4分の1を超えるという超高齢化社会に突入した日本。こうした時代を生きるには、年をとってもなるべく積極的に他人とコミュニケーションをとり、体を動かし、いろいろなことに好奇心を持つ……といったことを称揚することが多い。

 しかし、年をとれば体力も気力も衰える。そういう人に向かって「ポジティブに生きろ」などというのは、残酷なことではないか、と著者は言う。

 むしろ、孤立を恐れず、孤独だからこそ充実した生き方ができると実感する。あるいは減速して生きる、それも無理にブレーキをかけるのではなく、精神活動は高めながら自然にスピードを制御する、そうした生き方をすることが現代人のテーマではないか、と。

 このまま高齢化が進むと若者と老人との階級対立が生じ、「嫌老感」が蔓延する恐れも出てくる。それを見据えながら、いかに「嫌老」から「賢老」へ転換していくのか。「孤独」「減速」「下山」「回想」といった言葉をキーワードに、超高齢化社会を生き抜くための知恵が開陳されている。(中央公論新社 740円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  2. 2

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  3. 3

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  4. 4

    ドジャース内野手ベッツのWBC不参加は大谷翔平、佐々木朗希、山本由伸のレギュラーシーズンに追い風

  5. 5

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  1. 6

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  2. 7

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  3. 8

    維新のちょろまかし「国保逃れ」疑惑が早くも炎上急拡大! 地方議会でも糾弾や追及の動き

  4. 9

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  5. 10

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方