「永い眠り」スティーブン・P・キールナン著、川野太郎訳

公開日: 更新日:

 生物学者のケイト・フィーロらを乗せた調査船は、北極海を航海中、これまでにない巨大な〈候補氷山〉に遭遇した。候補氷山とは、極めて急速に冷却することで、周囲の生物が生存していたときの条件すべてが保存されたまま取り込まれた特殊な氷山だ。

 研究チームは、そこから採取したオキアミなどの蘇生に成功していたが、その巨大氷山には人間が氷詰めされていたのだ。ケイトらは早速、蘇生に着手し、くだんの人物が100年前に遭難した38歳のライス判事だとわかる。倫理的な観点から神をも畏れぬ仕業だと非難が湧き起こる一方で、新規ビジネスの大チャンスと捉える研究所の所長、独占スクープをものにしようと野心を燃やすジャーナリストなど、さまざまな思惑が交錯していく。そうした中、ケイトはライスを一人の男性として見るようになる……。

 いきなり100年後の世界に投げ込まれ、マスコミの好奇の目にさらされるライスの戸惑い、そんな彼に思いを寄せるケイト。風変わりな仕立てのサイエンスロマン。

(西村書店 1500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    前田健太「ドジャース入り」で大谷との共闘に現実味 日本復帰より「節目の10年」優先か

  2. 2

    井桁弘恵ショートカットで“山之内すず化”が加速! 「そっくり問題」いよいよ待ったナシ

  3. 3

    大阪万博は開幕1カ月を待たずトラブル続出…場当たり説明でGW後半の盛り上げムードに水を差す協会の大罪

  4. 4

    巨人阿部監督はなぜ田中将大にだけ甘いのか…2試合連続炎上でさすがに二軍調整も

  5. 5

    小田和正「77歳の現役力」の凄み…現役最年長アーティストが守り続ける“プロ意識”

  1. 6

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  2. 7

    ダウンタウン復帰が外部資金でコンテンツ配信のナゼ…松本人志に浮上した疑惑の顛末

  3. 8

    斎藤元彦・兵庫県知事が頑迷に貫く「治外法権」…公益通報を巡る国の勧告もガン無視

  4. 9

    もしやり直せるなら、入学しない…暴力に翻弄されたPL学園野球部の事実上の廃部状態に思うこと

  5. 10

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???