「永い眠り」スティーブン・P・キールナン著、川野太郎訳

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 生物学者のケイト・フィーロらを乗せた調査船は、北極海を航海中、これまでにない巨大な〈候補氷山〉に遭遇した。候補氷山とは、極めて急速に冷却することで、周囲の生物が生存していたときの条件すべてが保存されたまま取り込まれた特殊な氷山だ。

 研究チームは、そこから採取したオキアミなどの蘇生に成功していたが、その巨大氷山には人間が氷詰めされていたのだ。ケイトらは早速、蘇生に着手し、くだんの人物が100年前に遭難した38歳のライス判事だとわかる。倫理的な観点から神をも畏れぬ仕業だと非難が湧き起こる一方で、新規ビジネスの大チャンスと捉える研究所の所長、独占スクープをものにしようと野心を燃やすジャーナリストなど、さまざまな思惑が交錯していく。そうした中、ケイトはライスを一人の男性として見るようになる……。

 いきなり100年後の世界に投げ込まれ、マスコミの好奇の目にさらされるライスの戸惑い、そんな彼に思いを寄せるケイト。風変わりな仕立てのサイエンスロマン。

(西村書店 1500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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