理想の墓地はどこだ?

公開日: 更新日:

「世界の庭園墓地図鑑」菅野博貢著・写真

 多死社会を迎えた日本では、墓地問題が深刻度を増している。行き場のなくなった遺骨を小包で受け取り、海に散骨する代行ビジネスまであるという。本書は、ランドスケープ・デザインの視点から、世界各地の庭園型墓地を紹介しながら、日本の今後の墓地のあり方を考えるグラフィック本。

 日本ではそもそも、これまで墓地を公園や庭園と同等に位置付けるという発想が弱かった。一方のヨーロッパ諸国では、墓地を循環的、永続的に利用する取り組みが続けられている。特にドイツとオランダでは、思想面でも実践面でも参考にしたい事例が多く、イタリアはその美しい空間に圧倒されるという。

 そうしたひとつが、オランダ・アムステルダムの「新東墓地」だ。広大な敷地の中に、戦死者の墓地をはじめ、子供の墓域、自然葬のための散骨場、壁式墓地、水中に骨つぼを収納する水葬墓地、そしてイスラム教徒専用の土葬エリアなど、個人の価値観や死生観の多様性に対応して多彩な墓所が用意されている。一方で循環的永続使用を理想的に実現しつつあるこの墓地を、著者は「日本が最も手本とすべき墓地」だという。

 そのほか、世界一広い公園墓地であり、ヨーロッパ一美しいともいわれるドイツ・ハンブルクの「オールスドルフ墓地」や、世界最初の公園墓地でその後の墓地空間の手本となったフランス・パリの「ペール・ラシェーズ墓地」、埋葬者約500万人というスペイン・マドリードの「アルムデナ墓地」などヨーロッパ各国の墓地をはじめ、日本を含めたアジア、北・南米まで、120余カ所もの墓地を、写真や墓地の平面図とともに紹介する決定版。

 500点もの写真で天国のような墓地を回遊しながら、ふと自分の死後を想像する。

(原書房 8000円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 2

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  3. 3

    嶋基宏は一時期ノイローゼ状態になっていた...心ここにあらずで、魂が抜けた状態に

  4. 4

    伊藤健太郎とキンプリ永瀬廉で明暗クッキリ…「熱愛報道」出口夏希の足を引っ張りかねない“イメージ格差”

  5. 5

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  1. 6

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  2. 7

    視聴率の取れない枠にハマった和久田麻由子アナの不運 与えられているのは「誰でもできる役割」のみ

  3. 8

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  4. 9

    居酒屋倒産が過去最多ペース 客離れの背景にある「飲み放題5000円」の壁

  5. 10

    巨人“育成の星”のアクシデントに阿部監督は顔面硬直、原辰徳氏は絶句…桑田真澄氏の懸念が現実に