「天国の南」ジム・トンプソン著、小林宏明訳

公開日: 更新日:

 主人公は、テキサスの油田パイプラインでひと稼ぎしようと流れてきた青年・トミー。オクラホマで生まれ、奨学金をもらって大学に行けるかもしれないと思っていた高校生のとき、唯一の親族の祖父母がダイナマイトの事故で爆死して以来、人生がすっかり狂ってしまった。

 高校を中退してカナダ、カリフォルニア、ワシントン、オレゴン、ネブラスカなどを転々としながら日銭を稼いだが、稼いだ金はギャンブルと酒につぎ込みアル中になったのだ。仕方なくアル中の治療を受け、一文なしになった末にたどり着いたのがテキサス。そこでトミーは、荒野には似合わないキャロルというひとりの女に出会ったのだが……。

「おれの中の殺し屋」などの作品でノワールの鬼才として注目を浴び、スタンリー・キューブリックの映画脚本にも参加した著者が、若き日の経験をもとに描いた青春小説。

 1920年代の過酷な労働現場がみずみずしい文体で語られている。本作の翻訳は本邦初。

 (文遊社 2500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルトのドラフトは12球団ワースト…「余裕のなさ」ゆえに冒険せず、好素材を逃した気がする

  2. 2

    「汽車を待つ君の横で時計を気にした駅」は一体どこなのか?

  3. 3

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  4. 4

    コメ増産から2カ月で一転、高市内閣の新農相が減産へ180度方針転換…生産者は大混乱

  5. 5

    オリックスまさかのドラフト戦略 「凶作」の高校生総ざらいで"急がば回れ"

  1. 6

    ヤクルト2位 モイセエフ・ニキータ 《生きていくために日本に来ました》父が明かす壮絶半生

  2. 7

    オリ1位・麦谷祐介 暴力被害で高校転校も家族が支えた艱難辛苦 《もう無理》とSOSが来て…

  3. 8

    “代役”白石聖が窮地を救うか? 期待しかないNHK大河ドラマ『豊臣兄弟』に思わぬ落とし穴

  4. 9

    福山雅治は"フジ不適切会合参加"報道でも紅白で白組大トリの可能性も十分…出場を容認するNHKの思惑

  5. 10

    バスタオル一枚の星野監督は鬼の形相でダッシュ、そのまま俺は飛び蹴りを食らった