「天国の南」ジム・トンプソン著、小林宏明訳

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 主人公は、テキサスの油田パイプラインでひと稼ぎしようと流れてきた青年・トミー。オクラホマで生まれ、奨学金をもらって大学に行けるかもしれないと思っていた高校生のとき、唯一の親族の祖父母がダイナマイトの事故で爆死して以来、人生がすっかり狂ってしまった。

 高校を中退してカナダ、カリフォルニア、ワシントン、オレゴン、ネブラスカなどを転々としながら日銭を稼いだが、稼いだ金はギャンブルと酒につぎ込みアル中になったのだ。仕方なくアル中の治療を受け、一文なしになった末にたどり着いたのがテキサス。そこでトミーは、荒野には似合わないキャロルというひとりの女に出会ったのだが……。

「おれの中の殺し屋」などの作品でノワールの鬼才として注目を浴び、スタンリー・キューブリックの映画脚本にも参加した著者が、若き日の経験をもとに描いた青春小説。

 1920年代の過酷な労働現場がみずみずしい文体で語られている。本作の翻訳は本邦初。

 (文遊社 2500円+税)

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