「異形のものたち」小池真理子著

公開日: 更新日:

 神田にある小さな広告代理店に勤める私は久しぶりに、親友だった美咲と彼女のお父さんと3人でよく訪れた森の奥にある山荘に出かけた。

 2人が死んでもう15年になる。花見に行く途中、トラックと正面衝突し、炎上。突然の別れだった。

 私は室内に入ると、3人で過ごした楽しかったひと時に思いを馳せた。と、キッチンのあたりに何かぼんやりとした影が感じられた。気が付くと私は車を走らせ、喫茶店へ飛び込んだ。食事を済ませ帰ろうとすると、店主が恐怖に顔を歪め、「あんたのそばに2人いるよ。1人は女の人……」。

 山荘に戻った私は、ふと古い週刊誌に目を留めた。あの事故の死亡者リストの中になぜか私が……。(「森の奥の家」)

 甘美な恐怖が心奥をくすぐる6つの幻想怪奇譚を収めた小説集。

(KADOKAWA 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言