「意識のリボン」綿矢りさ著

公開日: 更新日:

「インストール」で第38回文芸賞を受賞してデビューして以降、「蹴りたい背中」で第130回芥川賞を、「かわいそうだね?」で第6回大江健三郎賞を受賞した著者による最新短編集。生活の中で女性が経験する普段言葉にしないささやかな気持ちを、小説という器に注ぎ込んだような短編小説が並ぶ。

 女性同士のおしゃべりの中にある力関係の不思議さが描かれた「岩盤浴にて」、書くたびに登場人物と自分を同一視されることに困惑する女流作家が主人公の「こたつのUFO」、通り魔出没のうわさに娘の身を案じる母親を描いた「声の無い誰か」など計8編を収録する。

 表題作は、母親を早くに亡くした主人公が交通事故に遭い、臨死体験する物語。事故に遭うまでの日常から、思いがけない事故に遭って自分の体から意識が離れていく過程、さらに意識だけになった自分が何を見て何を感じたかという、意識の旅を丁寧に追いかけながら描写している。

(集英社 1300円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い