スワイプ動作はできても積み木を掴む機能が低下

公開日: 更新日:

 公共の場で、親が子どもにスマホを与えて静かにさせている場面を見たことがあるだろう。その賛否は分かれるところだが、一定のリスクについては大人が理解しケアしなければならないと訴えるのが、メアリー・エイケン著、小林啓倫訳「子どもがネットに壊される」(ダイヤモンド社 1600円+税)である。

 サイバー空間が人間の思考に与える影響を研究するサイバー心理学の第一人者が、子どもの成長とネットの関係について解説している。

 乳幼児期からスマホやタブレットを与えると、親とのアイコンタクトや相手の表情を読み取る機会が減り、自分で遊びを創造するという行為もなくなる。米国小児科学会では、2歳未満の子どもにこれらのメディアを与えることを推奨しないと正式発表している。

 またイギリスの教員・講師協会では、未就学児のタブレット使用の増加に伴う、注意持続時間の低下や会話能力などの発達遅れを報告。タッチパネルはスワイプできても積み木を掴む手先の機能などが低下している子どもも増えているとしている。

 もっと深刻なのが10代への影響だ。サイバーセルフ(ネットの中の理想の自分)を追求し過ぎるあまり、現実世界で醜形恐怖症を発症するなど精神のバランスを崩す例もある。危険を顧みない“自撮り”で命を落としたり、セクスティング(スマホで性的な画像などをやりとりする行為)により自殺に追い込まれる10代の事件も起きている。

 子どもとネットを切り離すことはもはや不可能に近い。本書では、親世代がネットの有益性とリスクを正しく理解し、子どもとしっかりと会話できる関係性を築くことが不可欠であるとしている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」