イラストレーターの近藤さやかさん悪性リンパ腫との闘いを語る

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近藤さやかさん(イラストレーター)=悪性リンパ腫

 まだ会社員として働いていたときのことです。会社で義務付けられていた大腸がん検診で、血便反応が出たことが始まりでした。健康診断ではいつもオールAの健康優良児だったため、何かの間違いだと思い、深刻に受け止めていませんでした。

 再検査のため、病院を受診すると内視鏡検査を受けることになりました。検査への強い不安を訴えると、医師は「一度でも血便反応が出たのなら、自分を安心させるためにも検査を受けましょう」と穏やかに勧めてくださり、私は覚悟を決めました。すると、コメ粒ほどの小さな腫瘍が2つ見つかり、「念のために」と大腸のスペシャリストがいらっしゃる大きな病院へ、生検に出すことになりました。

 当初は数日間の入院で、内視鏡により摘出する簡易な処置の予定でしたが、入院当日、主治医から「何度も確認しましたが、良性とは少し色が違います」と告げられ、入院は取りやめに。翌日、血液内科のある別の病院への転院を勧められました。

 その際、「悪性リンパ腫の可能性があります」と伝えられたのです。初めて聞く病名に戸惑いながらも、ただならぬ空気を感じ、「私、がんですか?」と、気がつけば口にしていました。青ざめた私の様子を察して、先生は静かに「違うよ」とだけ言ってくださいました。翌日には現実を知らされることになるのですが、そのひと言が、当時の私には救いのように感じられました。

 翌日、指定された病院を受診すると、開口一番に「悪性リンパ腫の主な治療は抗がん剤です」と告げられ、そのとき初めて自分の置かれた状況を実感しました。とっさに「深刻な状態ですか?」と尋ねると、先生は穏やかに「必ず治るよ」と言ってくださいました。もちろん100%の確証があるわけではありませんが、その言葉を信じることで、心に希望が生まれました。

 幸い私の場合は腫瘍が小さく、命に関わるような段階ではないとのことでした。それが、2017年のちょうど今ごろの季節でした。

 次に、進行度(ステージ)と転移の有無を調べるため、PET検査を受けました。結果が出るまでの3週間は、とても長く感じました。初めはショックのあまり食事も喉を通らず、夜も眠れない日々が続きました。けれども、もし治療が必要なら、体力をつけておかなければなりません。食べられなくても少しずつ口にしよう、眠れなくても横になって休もう──そうやって自分を励ましながら、「何としても元の健康体に戻りたい」と心に誓いました。

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