「お金からの解放宣言」秋山哲著/かんよう出版/1800円+税

公開日: 更新日:

 先日、45歳になったということで、受給年金の暫定金額が送られてきた。これまでに払った分でもらう場合、国民年金が年間48万円、4年間会社員をやったので厚生年金が同14万円の合計62万円である。78歳のボランティア・尾畠春夫さんが「月額5万5000円」と言っていたが、それより年間4万円少ない。これを見ると多少は投資をしなくてはいけないと暗澹たる気持ちに……。

 本書の著者はUSJのマーケターをしながら個人投資家としての顔もあり、10年間で元手を60倍にしたという。同氏がいかに株を選び、どんな基準で売ったのか、といったことに加え、購入にあたっての条件などをつまびらかに明かしている。

 同氏はマーケターだけに、データを読み解くのは得意で、世界の株価を長期的に見た場合の結果から一つの結論を得る。バブル崩壊やリーマン・ショックなどで株価が大幅下落したことについても言及したうえでこう述べる。

〈これは過去50年間をベースにしたケースですが、最悪でも資産は最高値の半分程度に目減りしますが、6年弱で再び最高値まで回復するというのが過去の事実です(中略)経済が成長する限り株価は必ず回復しますし、お伝えしたように今後も経済は成長していきます〉

 著者は天才的な勘でバシバシと上がる銘柄を見極めるというよりは、株のセオリーを把握したうえで、過去のデータから「だからこうすれば上がる」と提示するスタイルを取る。上記の引用箇所につながる投資術について後の章でこう言及する。

〈私は投資を数十年していますが、いまだに来年や再来年の株価、たとえばNYダウ平均がどうなっているかわかりません。私がわかるのは10年後、20年後には上昇と下降を繰り返しながらも上昇しているということだけです〉

 だからこそ、5年後に大暴落したとしても、その5年後には上がっていると述べる。「多分勝てるセオリー」を著者は肌感覚で理解しており、それに従えば増えていくことをわかっている。私同様、自身の年金額にビビった人は本書が説くように「攻め」のために用意する500万円を25年後に4000万円にする投資術は学んでおいても良いだろう。

 また、本書では衣類は質の良いものを必要数のみ購入して長く使え、との節約術も提案する。当然、カネを浮かせて投資に回す費用を捻出するためである。 ★★半(選者・中川淳一郎)

【連載】週末オススメ本ミシュラン

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  3. 3

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 4

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  5. 5

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  1. 6

    陰謀論もここまで? 美智子上皇后様をめぐりXで怪しい主張相次ぐ

  2. 7

    白木彩奈は“あの頃のガッキー”にも通じる輝きを放つ

  3. 8

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  4. 9

    12.2保険証全面切り替えで「いったん10割負担」が激増! 血税溶かすマイナトラブル“無間地獄”の愚

  5. 10

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?