「やっぱり食いしん坊な歳時記」辰巳琢郎著
今まででいちばんおいしかったものはと聞かれて、辰巳は「炊きたてのごはん」と答えた。人生の最後に食べたいものはと聞かれると、「真っ白いごはんに香り高い焙じ茶をかけたお茶漬け」。
昭和1桁生まれの辰巳の両親は、「お百姓さんに申し訳ない」と、一粒たりともご飯粒を残すことを許さなかった。だが、ようやく箸を使えるようになった子どもには無理な命令だ。そこで父は、お茶をかけてすすることを勧めた。その習性はいまだに抜けず、フルコースを食べたときも最後は白いごはんと鮭ハラスでお茶漬けにして締める。(「新米の季節に思う」)
ほかに「きゅうりチャーハン」など、食いしん坊で知られる著者が忘れがたい味をつづったエッセー。
(集英社 1400円+税)