著者のコラム一覧
江 弘毅編集集団「140B」取締役編集責任者

1958年、大阪・岸和田市生まれ。「ミーツ・リージョナル」の創刊に携わり12年間、編集長を務める。現在は編集集団「140B」の取締役編集責任者。神戸松蔭女子学院大学教授。著書に「『街的』ということ」「K氏の大阪弁ブンガク論」ほか多数。

「大阪の教科書」橋爪紳也監修、創元社編集部編

公開日: 更新日:

 表紙に入っているが「大阪検定公式テキスト ビジュアル入門編」である。

 2009年に始まった「なにわなんでも大阪検定」は、大阪商工会議所が主催する「ご当地検定」であり今年、10回目を迎える。試験日は10月21日。で、出題される問題は全部で175問。どんなんかというと、
<国語/大阪言葉で食べ物に関する名詞でないものはどれでしょう?

 1あめちゃん 2かしわ 3ややこ 4あて

 社会/阪急電鉄の前身である箕面有馬電気軌道は、沿線の住宅地経営やターミナルデパートの創業など様々な手法で事業を拡大していきました。これらの斬新な経営戦略を次々と打ち出した経営者は誰でしょう?

 1早川徳次 2松本重太郎 3小林一三 4弘世助三郎>

 といったものだ。これを「おもろい」と思うのか「しょうもな」と思うのかはそれぞれだが、こういう大阪についての「問い/答え」のセットを増やすことを目的とするために、この本が編集されたとは思えない。

 で、その大阪とはどういうところか? 

お笑い阪神タイガース・おばちゃん・こなもの」であり、四天王寺と石山本願寺の「宗教都市」であり、難波宮と大阪城の「政治都市」でもある。また摂津・河内・和泉それぞれ固有の歴史と文化の土地柄があり、話される言葉も違う。つまりどういう座標軸でこの都市を見るかで、まったく違った大阪像を結ぶことになる。 

 それが“あほ”や“いちびり”の大阪弁であり、豊臣家滅亡の大坂夏の陣であり、漫画のじゃりン子チエであったりするわけだが、この本の良さは、それらのネタ自体のチョイスのみならず、気の利いた写真や図版の多用でとてもユニークな「大阪本」に仕上がっているところだ。

 知的好奇心や都市ブランド向上といったものでなく、「おもろい大阪をおもろがって編集する」。その意図がすごくよい。(創元社 1500円+税)

【連載】上方風味 味な本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜・村田監督が3年前のパワハラ騒動を語る「選手が『気にしないで行きましょう』と…」

  2. 2

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  3. 3

    マツコが股関節亜脱臼でレギュラー番組欠席…原因はやはりインドアでの“自堕落”な「動かない」生活か

  4. 4

    松井秀喜氏タジタジ、岡本和真も困惑…長嶋茂雄さん追悼試合のウラで巨人重鎮OBが“異例の要請”

  5. 5

    巨人・田中将大と“魔改造コーチ”の間に微妙な空気…甘言ささやく桑田二軍監督へ乗り換えていた

  1. 6

    5億円豪邸も…岡田准一は“マスオさん状態”になる可能性

  2. 7

    小泉進次郎氏8.15“朝イチ靖国参拝”は完全裏目…保守すり寄りパフォーマンスへの落胆と今後の懸念

  3. 8

    渡邊渚“初グラビア写真集”で「ひしゃげたバスト」大胆披露…評論家も思わず凝視

  4. 9

    「石破おろし」攻防いよいよ本格化…19日に自民選管初会合→総裁選前倒し検討開始も、国民不在は変わらず

  5. 10

    大の里&豊昇龍は“金星の使者”…両横綱の体たらくで出費かさみ相撲協会は戦々恐々