「パワー」ナオミ・オルダーマン著 安原和見訳
ドアを蹴破って2人の男が押し入ってきたとき、14歳のロクシーは母とソファに座っていた。背の低い男が母を暖炉に押しつけているのを見たら、ロクシーの体の中に何かが膨れ上がってきて、親指の先がちくちくした。母が「その子に手出ししてごらん、なにがあっても知らないから」と言うと、男はせせら笑った。
ロクシーはナイフを構えた男の手首をつかみ、胸の奧深くにある、なにかをひねった。閃光がはじけて、ぱちんと紙鉄砲のような音がした。髪の毛の燃えるようなにおいがして、舌の裏側に苦いオレンジの味がした。見れば、男は倒れていた。
手から強力な電流を発する力を手に入れた少女たちが、自分に迫害を加えたものに復讐する、フェミニズム小説。
(河出書房新社 1850円+税)