「真実の航跡」伊東潤著

公開日: 更新日:

 1944年3月、大日本帝国海軍の巡洋艦「久慈」はインド洋を航行中のイギリス商船「ダートマス号」を撃沈。生存者を救助した後バタビアへ上陸。その後シンガポールへ向かう途中でインド人20人を含む69人の捕虜を洋上で殺害した。

 敗戦後、この事件の首謀者として第16艦隊司令官・五十嵐と久慈艦長の乾が戦犯として起訴され、香港に収監。この戦犯裁判の被告弁護にあたることになったのが弁護士の鮫島と河合だ。鮫島は五十嵐、河合は乾を担当することになるが、五十嵐の弁護をすることは同時に乾の責任を追及することになり、鮫島と河合は一種の敵対関係に陥ってしまう。

 事件を調べていくうちに捕虜虐殺に至ったのは乾の暴走によるものだと判明。鮫島は五十嵐の無罪を確信するが、五十嵐は帝国軍人としての責任から極刑を受け入れようとする。検事側の英国では五十嵐の極刑は既定事実であり覆せないのだから乾を追及するのは無駄だとする声が多い中、鮫島はあくまでも「法の正義」を貫こうとする……。

 実際のビハール号事件をもとに、BC級戦犯裁判の実態と、法における真実とは何かを鋭く描いた渾身の歴史小説。

(集英社 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    日本の課題がわかる「リチウム戦争」アーネスト・シェイダー著/ニューズピックス(選者:佐藤優)

  2. 2

    天皇と戦争の世紀(1)岸信介外相の入閣に異を唱えた昭和天皇

  3. 3

    天皇と戦争の世紀(2)軍部の「大権干犯に当たらず」の説明に苛立ち

  4. 4

    皿書店(豪徳寺)「開高健も書いているし、食の本の店にしよう。そんな感じで」1年前にオープン

  5. 5

    「埋もれてきたもうひとつの抑留の真実と、日本政府の冷淡を知ってもらいたい」──「モンゴル抑留 見捨てられた死者たち」井手裕彦氏

  1. 6

    天皇と戦争の世紀(3)無条件降伏の後、日本側が天皇制をどう死守したのか

  2. 7

    「いのち、見つめて」夏川草介、渡辺淳一ほか著|看取りの真意を問いかける傑作医療小説集

  3. 8

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(2)「能面検事の挫折」中山七里著

  4. 9

    よみがえった写真が伝える戦前戦時下の“時代の空気”「AIとカラーでよみがえる戦争の昭和史」別冊宝島編集部編

  5. 10

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(3)「『石球城』殺人事件」北山猛邦著

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    「マクドは健康保険と年金に加入できてよかった」 シニアが働き続けるために必要なこととは?

  3. 3

    徳川光圀(1)水戸黄門は全国漫遊などしていない 主に出かけたのは江戸と領地の往復

  4. 4

    東京・蒲田の2駅結ぶ蒲蒲線、大田区と地元を取材して分かった実現のハードルと地元の思い

  5. 5

    東京・大井町、OIMACHI TRACKSと対照的な東小路飲食店街、商店街理事長が直面する2つの問題

  1. 6

    NHK夏の音楽特番「うたであえたら」は北川景子のMCが見事 カオスと化した近年の紅白はお手本に

  2. 7

    「山口組」抗争指定解除へ、それでも対立は続く…6代目幹部「喜ぶのは早い」

  3. 8

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  4. 9

    止まらない高市首相SNS発信に官邸総動員の実態…この週末は3日間で11連投も「ゴキブリ」投稿で大炎上

  5. 10

    清水アキラさんが三男急死の直前に語っていた“せがれ”のこと 良太郎さんに口説かれものまねショー復帰