「峠越え」伊東潤著

公開日: 更新日:

■凡庸さを自覚、天下人となった家康の人間力を活写

 IT業界から歴史小説作家に転身、吉川英治文学新人賞、山田風太郎賞など数々の賞を受けた実力派が、徳川家康を描いた。

 己の凡庸さを自覚している家康は、才走った信長を畏怖している。同盟関係にありながら、信長を頭上の重しのように感じ、信長のひと言に、家康の肝は縮み上がる。

 小心な家康だが、それでも三河武士の粘り強さで、桶狭間、姉川、三方ケ原など幾多の戦いを切り抜け、信長を助ける。だが、常人ではない信長の思惑は計り知れない。今川も武田も滅んだ今、自分は用済みになったのではないか。

 疑心暗鬼になりながらも、信長の招きに応じて家康は安土に赴く。京、大坂、堺を転々と連れ回されていた折も折、本能寺の変で信長死去。明智光秀の追っ手を逃れるために、家康一行は難所である伊賀の峠越えに挑む。用心深い重臣たちに支えられ、家康は死を覚悟しながらも、一つ、また一つと峠を越えていく。

 信長には家康を謀殺する計画があったとの説に基づき、本能寺の変の意外な真相が描かれる。からくも生き延びた家康は心の中で信長に言う。「凡庸なわしを侮りましたな」。やがて天下人となる家康の人間力を活写した傑作長編。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    山田涼介が「令和最強アイドル」と評されるワケ…主演ドラマ「一次元の挿し木」は玉森裕太を三歩リード

  2. 2

    沈黙貫く橋本愛vs佐藤二朗「週刊新潮」で反論の泥沼化…SNS連投で"自滅"を心配する声も

  3. 3

    『ひよっこ』再放送記念、神回「ビートルズがやって来る」再録

  4. 4

    骨折で入院中ですが…ブラジルに惜敗した森保Jを巡る一部炎上報道で心が痛い

  5. 5

    萩本欽一〈24〉相方の坂上二郎さんとは「遊ばない・食事しない・夢を語らない」を徹底した事情

  1. 6

    男子バスケ日本代表に激震、ホーバス監督“解任”の真相…過去には八村塁と確執も 

  2. 7

    孤立深まる高市首相…国会10日ぶり正常化でも続く“包囲網” 与党内からも反発の声噴出の自業自得

  3. 8

    佐藤二朗騒動の余波!「福田組」の長澤まさみへの“ハラスメント”舞台挨拶の悪ノリ動画が再注目…女性視聴者は嫌悪

  4. 9

    趣里が7月期テレ朝ドラマで出産後初主演 続く水谷家との「蜜月」で三山凌輝にも復活説

  5. 10

    村上誠一郎前総務相が高市政権バッサリ!「これが本当に保守政治なのか」…突きつけた自民「立党宣言」との乖離