「ナチスから図書館を守った人たち」デイヴィッド・E・フィッシュマン著羽田 詩津子訳

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 1941年6月、バルト3国のひとつリトアニアへドイツ軍が侵攻する。リトアニアの首都ヴィルナ(ビリニュス)は「リトアニアのエルサレム」と呼ばれ、多くのユダヤ人が住んでいた。ドイツ軍の支配下に入ったヴィルナでは、ドイツ軍に従うリトアニア警察や他の武装グループがユダヤ人を襲撃し始め、ユダヤ人はダビデの星がついたアームバンドをつけるよう命じられる。ドイツ軍は、ヴィルナのユダヤ文化を根こそぎにするべく、何百万点ものユダヤ人の本、原稿、美術品を処分すると同時に、研究用として何十万点に及ぶ文化的財産をドイツの図書館や施設に移送した。

 そうした蔵書の分類や選別のために、ドイツ軍は40人のゲットーの住人たちを徴発。そのメンバーは“紙部隊”と呼ばれたが、彼らは監視の目を盗み、貴重な本や書類を胴体に巻き付けてゲットーに持ち込んでいた。本書は、その“紙部隊”に関わった人たちが、貴重な文化遺産を次世代へと受け渡そうとして奮闘する姿を描いたもの。

 41年10月、ゲットーから3000人が連れ去られ大きな不安に襲われる中、ゲットー内にあった図書館の本の貸し出しは急増する。ゲットー内の住民にとって、読書は目の前のあまりに苛酷な現実から回避するための手段だったのだ。

 その命の糧ともいうべき貴重な本、民族の証しである文献を一冊でも多く残さねばならない。そうした強い使命感から紙部隊のメンバーは死力を尽くして本を守り抜き、ついにドイツ軍が撤退する日を迎える。だが、それも束の間、今度はスターリンのソビエトがユダヤ文化に敵意をむき出しにしてくる……。

 文字通り歴史に翻弄された彼らの足跡は、ホロコーストという蛮行の、知られざる側面を教えてくれる。 <狸>

(原書房 2500円+税)

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