「志らくの言いたい放題」立川志らく著/PHP文庫

公開日: 更新日:

 スクープしたわけでもないのに「読売」だけでなく「朝日」までが元号決定の号外を出したのには呆れた。これでは「官報」だろう。のちに自民党総裁となり病に倒れるまでのわずかな期間、首相をやった石橋湛山は戦後まもなく「元号を廃止すべし」と主張した。どのメディアもその元号廃止論を紹介することもなく浮かれている。

 腹立たしい限りだが、そんなバカバカしい風潮に志らくが強烈な一発をかます。

 ゲストとして呼ばれた沖縄問題のトークショーで、こう言ったのである。

「普天間の移設の件ですが、国外が無理、国内でもどこもいやだとなるとどうにもならない。私はこれだけ広い日本なのだから、どこかあるはずだと日本地図を広げて探しました。普天間の基地は東京ドーム百三個分の広さ。ありました。ぴったりの場所が。那須の御用邸。あそこは東京ドーム百四十個分の広さがある。すっぽりはまるんです。東京ドームが三十七個残れば陛下が散歩するぐらいの広さは残るし。陛下ににらみを利かせていただきましょう。米軍よ馬鹿なまねはするなとね」

 会場の新宿のライブハウスは爆笑の渦に包まれたという。それで続けた。

「沖縄問題はしょせん、政治家も国民もひとごとなんですよ。沖縄の痛みなんかだれもわかっちゃいない。この沖縄問題をよい方向に持っていくには、沖縄出身の政治家が総理大臣になればいいんだ。それを実現させようではないか」

 確かに安倍晋三に代わって玉城デニーが首相になったら、少なくとも「ひとごと」ではなくなる。

 ショーに同席した沖縄選出の国会議員、糸数慶子が、志らくに、米兵が夏休みでアメリカに帰っている間も、食べ物などを腐らせてはいけないと冷房をかけっぱなしであることを知っているか、と尋ねる。その費用も私たちの血税から出ているわけだからである。

 そう言われて志らくは怒った。

「じゃあ、沖縄の電力会社に頼んで、電気をきっちまえ!」

 私は、新基地は沖縄の辺野古ではなく、安倍の地元の下関に建設したらいいと思う。トランプべったりの安倍は、そうやってアメリカにシッポを振ったらいいのではないか。師匠の談志譲りの志らくの毒のきいた「言いたい放題」はオススメである。

★★★(選者・佐高信)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋