「ブックショップ」ペネロピ・フィッツジェラルド著、山本やよい訳

公開日: 更新日:

 物語の舞台は、1959年のイギリス。主人公のフローレンス・グリーンは、戦争で亡くなった夫との夢だった書店をオープンするため、海辺の小さな町ハードバラの空き家を手に入れた。

 オールドハウスと呼ばれるその家は、7年もの間放っておかれた物件で、屋根瓦が崩れおち、おまけに地下にはかつて洪水になった際の海水がまだ残っているようなしろもの。その上幽霊まで出るような場所だったが、フローレンスは精力的に開店の準備へとこぎつける。

 当初、銀行員や住人たちの女1人の挑戦を揶揄するような町の人々の声があったにもかかわらず、何ひとつない町にできた書店は、いつしか住民が詰めかける人気の場所になっていく。しかし、町の有力者は事あるごとにフローレンスに嫌がらせをするのだった……。

 本作を含む3作の小説が英国の権威あるブッカー賞にノミネートされ、79年に「テムズ河の人々」で受賞を果たした著者の長編小説。保守的な田舎町に本をもたらそうと奮闘する女性の静かなる挑戦を描く。「マイ・ブックショップ」の名で映画化もされ、3月から各地で上映されている。

(ハーパーコリンズ・ジャパン 1700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋