「マーダーズ」長浦京著

公開日: 更新日:

 阿久津清春は28歳の商社マン。会社に戻る途中、路地裏から女性の悲鳴が聞こえた。駆け付けると、男がナイフで女を切りつけている。思わず止めに入ると、男の服からガソリン臭がする。そこへ相手の女が男にスタンガンを押しつけ、男は炎に包まれる――。

 いきなり緊迫感に満ちた場面から始まるが、これはほんの序の口。この女性、柚木玲美は清春をわざと事件に巻き込んだのだ。玲美は清春が殺人を犯したことを知っていて証拠も握っている。もし公表されたくなければ、19年前に死んだ母の死の真相と行方不明になった姉の居所を探ってくれという。

 玲美はかつて殺人事件を犯した兄の共犯と疑われたことのある則本敦子警部補の秘密も握っており、清春は敦子と一緒に玲美の依頼を遂行することになった。調べていくと、自殺とされた玲美の母は実は他殺であり、それと同じ手口による偽装自殺事件がいくつも発覚。時期も被害者の年齢・性別もバラバラの事件に共通するものとは?

 法では裁けない「隠れた殺人者」を巡って幾重にも張り巡らされた伏線が終盤意想外な形で結び付いていく。大藪賞受賞作家の渾身の犯罪小説。

 (講談社 1800円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも