「残心」鏑木蓮著

公開日: 更新日:

 国吉冬美は京都の地元情報誌のライター。漫画家になるのが夢だったが、いまは別の目標を持っていた。人生の「枯」と「衰」にスポットを当てたルポルタージュで人気を得ている作家・杉作舜一の作品にすっかり魅了され、ゆくゆくは杉作のようなジャーナリストになりたいと思っている。

 その杉作が取材で京都に来ており、三雲医院の看護師・夏恵のつてで会えることになった。杉作は老老介護をテーマにしており、みとり医として全国的に有名な医師・三雲に協力を求めていた。三雲の紹介で認知症の妻を介護する夫の元を訪れた杉作だが、そこにあったのは絞殺された妻と首を吊った夫の死体であった。

 警察は介護の疲れによる無理心中という見立てで、杉作は、約束した時間に心中を図ったのは、自分に対して夫がなんらかのメッセージを伝えたかったのだとの考えを示した。ひょんなことから杉作の取材の手伝いをするようになった冬美は、亡くなった老夫婦の話を聞いて回っているうちに、無理心中という結末に違和感を持ち始める……。

 老老介護、皆保険制度の崩壊といったアクチュアルな問題に迫った渾身の社会ミステリー。

(徳間書店 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも