「まつらひ」村山由佳著

公開日: 更新日:

 浅間山の麓、長野県御代田町に嫁いだ舞桜子は、幼い頃からひたすら好きだった雅文と結ばれ、娘にも恵まれた。

 家業の農園も順調で、姑ともうまくいっており、あまりの幸せに不安を覚えるほどだった。

 気がかりといえば、初夏から夏の終わりにかけて、ちょうど「龍神まつり」が近づく頃に、決まって夫と激しくもつれ合う艶夢を繰り返し見ることだ。ふだんはおとなしい夫が夢の中ではみだらに攻め立てる。夫にも打ち明けられずに悶々とする舞桜子は、ついに夢の正体を知ることに……。(「夜明け前」)

 23歳の若さで逝った、歌手の〈クズケン〉こと葛巻剣児。幼馴染みの友春は剣児を〈神〉と崇めていたが、剣児の引っ越しでしばらく連絡が途絶える。再会したのは2人の故郷・岩手県黒石町で行われる蘇民祭。

 日本3大裸祭りの1つで、ふんどし姿の裸の男たちが激しくぶつかり合う。剣児のたくましい裸体に見惚れる友春だが……。(「約束の神」)

 浅草の四万六千日、柳川の白秋祭、野沢の道祖神祭り、相馬野馬追――全国の祭りを舞台に、多様な性を描いた短編集。

(文藝春秋 1500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも