「満洲コンフィデンシャル」新美健著

公開日: 更新日:

 昭和15年、憲兵を殴って海軍を追い出された元士官候補生・湊春雄は、満洲鉄道本社へ飛ばされ、神戸から船に乗り大連にやってきた。

 到着したばかりの春雄を待っていたのは、その足で新京の満洲映画協会に行くという任務。表向きは記者として出向し、裏の任務は満鉄理事長の甘粕正彦の弱みを探れというのだ。

 不服に思いながらも軍の機密だというフィルムを持たされて大連駅に向かった春雄は、西風と名乗る男に盗人につけられているから気を付けるようにとの忠告を受ける。軽薄そうな西風をうさんくさく感じた春雄だったが、西風の予言通りふたりの中国人にしつこくつきまとわれ、ついには拳銃をつきつけられる羽目に。執拗に追ってくる彼らから助けてくれたのは、伊達政宗の末裔という伊達宗敦と、信用できないはずの西風だった……。

 2015年「明治剣狼伝西郷暗殺指令」で第7回角川春樹小説賞の特別賞と、第5回歴史時代作家クラブ賞文庫新人賞を受賞してデビューした著者の最新作。川島芳子、李香蘭ら、満洲という舞台に現れた人々の駆け引きを春雄の目を通してスリリングに描いている。

 (徳間書店 1800円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言