「あちらにいる鬼」井上荒野著

公開日: 更新日:

 流行作家の長内みはるは、ある講演会で気鋭の戦後派作家・白木篤郎と出会う。みはるは、初対面からなれなれしい白木をうっとうしく思いながらも、小説家としての白木と、ひとりの男としての白木の両方に魅了されていることに気づく。その頃、一緒に暮らしていた男・真二との生活に倦怠感を覚えていたみはるは、やがて真二を捨て、白木と付き合うことに。

 一方、白木の妻・笙子は、何度も繰り返す夫の女遊びを黙認することに徹していた。夫の原稿の清書をし、時には夫の名前で小説を代筆し、夫が付き合って揉めている女になぜか妻である自分が詫びを入れに行くことを受け入れることで、平穏な日常を守ろうとしていたのだ。そんな笙子は、講演旅行の後に、今度は夫がみはると付き合っていることに気づいた。笙子は、いつも女遊びを笙子に吹聴する夫が、なぜか口にしないみはるの存在が気になり始める……。

 小説家の父・井上光晴と母、瀬戸内寂聴をモデルに、娘である著者が書くことと情愛で結ばれた不思議な三角関係を真正面から描いた問題作。同じ男に翻弄された女同士の絆を、赤裸々につづっている。

(朝日新聞出版 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景