「女たちのアンダーグラウンド」山崎洋子著

公開日: 更新日:

 JR根岸線山手駅近くにある根岸外国人墓地。明治13年に開設されて以来約1200人の外国人が埋葬されているが、そのほとんどが敗戦直後の昭和20年から数年以内のもので、横浜に進駐していたアメリカ人と日本人女性の間に生まれた嬰児、いわゆるGIベビーのものだという。著者がその存在を知ったのは20年前に上梓した「天使はブルースを歌う」の取材のときだった。占領下でもあり、その存在は一種のタブーとして長い間歴史の闇に葬られていた。

 本書は、そうした闇に光を当て、米兵と日本人女性の間に生まれた子どもたちがそれ以降どのように生きたのかをさまざまな人たちの証言によって跡づけている。当初は混血児として差別にさらされていたのが、60年代の「ハーフ」ブームで脚光を浴びるようになったモデルやミュージシャンたち。むろん、それぞれの軌跡はハーフという言葉でひとくくりにすることはできないが、そこには「戦後」という時代がうみ落とした何ものかが見える。

 著者はさらに中華街の在日中国人や色街で働いていた日本人女性やタイ人女性たちの声も拾い、横浜という町の闇と光を浮かび上がらせていく。

(亜紀書房 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する