「『アラブの春』以後のイスラーム主義運動」高岡豊、溝渕正季編著

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 チュニジアで大規模な民衆デモが起こったのが2010年暮れ。翌年1月には24年にわたったベンアリ大統領独裁体制が崩壊し、あっという間にアラブ社会一円に民主化の動きが広まった。だが、欧米社会が「アラブの春」ともてはやす一方、シリアでは丸腰の民衆への徹底的な暴力に加え、米ロなどの露骨な介入も起こり、シリア難民はあちこちで邪魔者あつかいされる悲劇に至った。

 若手のアラブ・イスラム研究者を主とした計10人からなる本論集は、中東地域だけに限らず、アメリカやスウェーデンなどにおけるイスラム主義にも目を配る。

 最終章では、アルカイダやイスラム国などのイスラム過激派も取り上げて分析。単なる反欧米感情だけでなく、イスラエルと和平を結んだエジプトのサダト大統領を「イスラームに対する裏切り、背教」として暗殺されたことなどを紹介する。

(ミネルヴァ書房 3500円+税)

【連載】本で読み解く激動の世界情勢の行方

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