「『アラブの春』以後のイスラーム主義運動」高岡豊、溝渕正季編著

公開日: 更新日:

 チュニジアで大規模な民衆デモが起こったのが2010年暮れ。翌年1月には24年にわたったベンアリ大統領独裁体制が崩壊し、あっという間にアラブ社会一円に民主化の動きが広まった。だが、欧米社会が「アラブの春」ともてはやす一方、シリアでは丸腰の民衆への徹底的な暴力に加え、米ロなどの露骨な介入も起こり、シリア難民はあちこちで邪魔者あつかいされる悲劇に至った。

 若手のアラブ・イスラム研究者を主とした計10人からなる本論集は、中東地域だけに限らず、アメリカやスウェーデンなどにおけるイスラム主義にも目を配る。

 最終章では、アルカイダやイスラム国などのイスラム過激派も取り上げて分析。単なる反欧米感情だけでなく、イスラエルと和平を結んだエジプトのサダト大統領を「イスラームに対する裏切り、背教」として暗殺されたことなどを紹介する。

(ミネルヴァ書房 3500円+税)

【連載】本で読み解く激動の世界情勢の行方

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    年収1億円の大人気コスプレーヤーえなこが“9年間自分を支えてくれた存在”をたった4文字で表現

  2. 2

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  3. 3

    映画「国宝」ブームに水を差す歌舞伎界の醜聞…人間国宝の孫が“極秘妻”に凄絶DV

  4. 4

    “やらかし俳優”吉沢亮にはやはりプロの底力あり 映画「国宝」の演技一発で挽回

  5. 5

    山尾志桜里氏“ヤケクソ立候補”の波紋…まさかの参院選出馬に国民民主党・玉木代表は真っ青

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題?

  2. 7

    フジテレビCM解禁の流れにバラエティー部門が水を差す…番宣での“偽キャスト”暴露に視聴者絶句

  3. 8

    国分太一は“家庭内モラハラ夫”だった?「重大コンプラ違反」中身はっきりせず…別居情報の悲哀

  4. 9

    輸入米3万トン前倒し入札にコメ農家から悲鳴…新米の時期とモロかぶり米価下落の恐れ

  5. 10

    慶大医学部を辞退して東大理Ⅰに進んだ菊川怜の受け身な半生…高校は国内最難関の桜蔭卒