「『帝国』ロシアの地政学」小泉悠著

公開日: 更新日:

 中国と並ぶ新興大国といえばロシア。しかしソ連崩壊後のロシアは自国を統合するアイデンティティーの欠如に苦しんできた。西は欧州、東は極東におよぶロシアは宗教も民族も多様。しかし共産主義時代のような統一理念がないのだ。

 ロシアの安全保障問題を専門とする著者は、ナチ時代のドイツからきた地政学の発想がロシアに見られるところに注目。周囲の旧ソ連諸国を思いのままコントロールする「帝国志向」は神話に過ぎないものの、プーチン大統領は軍事的・政治的に他国に依存しない自己決定権を保持する国だけを「主権国家」と認める特異な世界観を持っている。

 その観点からドイツを「主権国家ではない」というプーチン。自前で核兵器を保有せず、同盟国に軍事的に守ってもらうだけの国は「主権」がないという意味だ。

 とすれば日米軍事同盟下の日本も同じ。対ロ外交はよくよく心しなければ手玉に取られるだけということだ。

(東京堂出版 2400円+税)

【連載】本で読み解く激動の世界情勢の行方

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  4. 4

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  5. 5

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  1. 6

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    矢地祐介との破局報道から1年超…川口春奈「お誘いもない」プライベートに「庶民と変わらない」と共感殺到

  4. 9

    渡邊渚“逆ギレ”から見え隠れするフジ退社1年後の正念場…現状では「一発屋」と同じ末路も

  5. 10

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態