「R帝国」中村文則著

公開日: 更新日:

批判封じ

 2016年5月から17年2月まで新聞連載された。「朝、目が覚めると戦争が始まっていた」というカフカばりの一文から始まる。近未来の島国R帝国が隣国のB国に宣戦布告したのだ。さらにY宗国のテログループが原発を占拠するという事件も起きる。R帝国は名ばかりの野党が存在するが事実上の一党独裁の強権政治が敷かれている。物語は、国の政治に疑義を抱き始めた矢崎とテログループの女性兵士アルファ、野党党首の秘書・栗原と秘密の抵抗組織Lのサキという2組の男女の視点で交互に語られ、この戦争の背後に潜む陰謀が明らかになっていく。

 辞書に「抵抗」という言葉が載っていないほど、批判を封じ込める「党」は、2組の未来を無残に打ち砕いていく。最後、かすかな希望の光がともされているのが救い。

(中央公論新社 720円+税)

【連載】名作でよむ破綻した近未来

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  2. 2

    一発退場のAぇ!group福本大晴コンプラ違反に「複数人関与」疑惑報道…旧ジャニ“インテリ”枠に敬遠の風向き

  3. 3

    だから今年の日本女子オープンはつまらない…“簡単コース”で予選カットラインは史上最少「-1」

  4. 4

    崖っぷち渋野日向子に「日本人キャディーと縁を切れ」の声…外国人起用にこれだけのメリット

  5. 5

    囁かれていた「Aぇ!group」は「ヤベぇ!group」の悪評判…草間リチャード敬太が公然わいせつ容疑で逮捕の衝撃

  1. 6

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  2. 7

    阪神・才木浩人はドジャース入りで大谷と共闘の現実味…「佐々木朗希より上」の評価まで

  3. 8

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  4. 9

    ドジャース佐々木朗希もようやく危機感…ロッテ時代の逃げ癖、図々しさは通用しないと身に染みた?

  5. 10

    男子の試合はガラガラ…今年のANAオープンのギャラリー数を知って愕然としました