著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「アウターライズ」赤松利市著

公開日: 更新日:

 アウターライズとは、陸地から見て離れた外側の地形のことで、そこで起きる地震は離れているために陸地の揺れは比較的に小さい。ところが、併発する津波は大規模なものになりやすい。

 そのアウターライズ地震が、東日本大震災から10年後に東北をふたたび襲うのである。それが第1部の「襲来」。その様子は克明には描かれない。なぜなら、本筋はそれに続く第2部「開国」にあるからだ。

「開国」とは何か。アウターライズをきっかけに東北6県が日本から独立するのである。

「東北国」は国民に無条件で生活費を支給するベーシックインカム制度を実施。成人で25万円、未成年には10万円。さらに医療費がタダ、家賃は国が負担。ちなみに首都は、郡山だ。独立してから約3年後に、日本国のジャーナリスト一行を、「東北国」は迎え入れる。で、日本国のジャーナリスト一行が「東北国」の内部に入って、さまざまな説明を受けるのが第2部「開国」である。

 国民に資金をばらまいて、しかも税金がなしとは、いったい「東北国」の資金はどうなっているのか。そういうことは本書を読まれたい。もう少し、「東北国」のディテールを読みたかったとの気持ちがないではないが、それはよしとする。東北6県が独立する小説は本書が初めてではなく、西村寿行著「蒼茫の大地、滅ぶ」という先駆的傑作があり、それには及ばないが、しかし本書も楽しい。

(中央公論新社 1700円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・藤川監督に「裸の王様」の懸念 選手&スタッフを驚愕させた「コーチいびり」

  2. 2

    JFAは森保一氏の“囲い込み”に必死 W杯後の「次の日本代表監督」のウワサが聞こえない謎解き

  3. 3

    TBS「ラヴィット!」の“テコ入れ”に不評の嵐! グダグダぶりを楽しむ独自性損失で視聴者離れ加速危機

  4. 4

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  5. 5

    元横綱照ノ富士「暴行事件」の一因に“大嫌いな白鵬” 2人の壮絶因縁に注目集まる

  1. 6

    小松菜奈&見上愛「区別がつかない説」についに終止符!2人の違いは鼻ピアスだった

  2. 7

    高市首相「私の悲願」やはり出まかせ…消費税減税「断念」に向け経済界・財務省・自民党・マスコミが包囲網

  3. 8

    阿部監督のせい?巨人「マエケン取り失敗」の深層 その独善的な振舞いは筒抜けだった

  4. 9

    《タニマチの同伴女性の太ももを触ったバカ》を2発殴打…元横綱照ノ富士に大甘処分のウラ側

  5. 10

    米国とイランが2週間の停戦合意も日本は存在感ゼロ…お粗末すぎた高市外交を識者「完全失敗」とバッサリ