著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「カメレオンの影」 ミネット・ウォルターズ著 成川裕子訳

公開日: 更新日:

 軍歴のある一人暮らしの男が殴殺される事件が多発し、容疑者として尋問されたのが英国陸軍中尉のアクランド。彼は派遣先のイラクで、爆弾によって2人の部下を死なせ、自身も片目を失う重傷を負う。そのためか、部下たちを死なせてしまったという負い目が彼にはある。また生きることに投げやりなところもある。しかし、この男がなにを考えているのかは語られない。だから、とても不気味で、緊張感が漂い続ける。

 そのアクランドが、黒い髪にメッシュを入れた短髪の大女、ジャクソンと知り合うのが次の展開で、2人のこの関係も不思議。たとえば「こまごました仕事はぜんぶ女友達にやらせ、豚みたいに食い、客を脅しておとなしくさせてから巻き上げた金の上でふんぞり返っている」とアクランドはジャクソンを評するのだが、それではジャクソンを嫌っているのかというと、そうでもない。どこかに、彼女に一目置いている風情がある。明言はしないけれど、そういう雰囲気がある。ちなみに、ジャクソンは医者で、レズビアンの恋人がいる。

 ミネット・ウォルターズは、「氷の家」「女彫刻家」「鉄の枷」などでさまざまな賞を受賞している「英国ミステリー界の女王」である。デビューが1992年だから、30年選手だが、まだ全然衰えていない。本作も人間の心理の襞を絶妙に描いて、たっぷりと読ませる。まことにうまい。

(東京創元社 1400円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    世界陸上マラソンで金メダル谷口浩美さんは年金もらい、炊事洗濯の私生活。通学路の旗振り当番も日課に

  2. 2

    佐々木朗希"裏の顔”…自己中ぶりにロッテの先輩右腕がブチ切れていた

  3. 3

    全国模試1位の長男が中学受験、結果は…“ゲッツ‼”ダンディ坂野さんに聞いた 子への接し方、協力の仕方

  4. 4

    スピードワゴン小沢一敬 約2年ぶり活動再開のウラで見えた浜田雅功の「漢気」

  5. 5

    <第3回>力士とのセックスはクセになる!経験者が赤面吐露した驚愕の実態とは…

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希は結果が伴わない“自己中”で「生き残り」に崖っぷち【31日ガーディアンズ戦に先発へ】

  2. 7

    坂口杏里に必要なのは処罰より“保護”か? 300円サンドイッチ万引で逮捕…呆れる声から心配する声まで

  3. 8

    W不倫報道のNHK與芝アナ 現場で有名だったフェロモン取材

  4. 9

    Wソックス村上宗隆にメジャーOB&米メディアが衝撃予想 「1年目にいきなり放出」の信憑性

  5. 10

    前田敦子“アンダーヘア透け疑惑”写真集が絶好調! トップ張った元アイドルの生き様を女性が強く支持