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「2050年世界人口大減少」ダリル・ブリッカーほか著 倉田幸信訳

 新型コロナウイルス禍は「進歩」の幻想をついに破壊した。人類は急速に衰退していくのか。



 3年前、国連が発表した人口予測は衝撃だった。現在、75・5億人の世界人口が2030年には10億人増、50年には97・7億人を超えるというのだ。しかしカナダの統計学者とジャーナリストは本書で真っ向から反論。50年ごろ世界人口は減少に転じ、その後は「二度と増加することなく減り続ける」という。「我々の目前にあるのは人口爆発ではなく人口壊滅」なのだ。

 国連の予測では先進国が減少、途上国では増加という見立てだが、本書は途上国の減少は国連予測よりはるかに早いとみる。いま人口減少を示すのは25カ国だが、50年までには35カ国。ブラジルとインドネシアも今世紀半ばには減少し、インドもやがて同じ運命に。アフリカ諸国は増加するが、若い女性の教育率が上がって避妊や産児制限が広まるとあっという間に減少に転じ、もはや元には戻らないという。

 そうなると世界中で「移民の奪い合い」が起こるだろう。移民排斥を叫ぶ「怒り」から活力をなくす社会への「焦り」と「悲鳴」に変わるのだ。

(文藝春秋 1800円+税)

「世界史の針が巻き戻るとき」マルクス・ガブリエル著 大野和基訳

「新世代の哲学の旗手」として世界的に注目を集める著者は、いま「世界は19世紀に戻っている」という。

 19世紀はヨーロッパの最盛期で「地球の覇者として、非常に成功していた」。しかし、これを最後にヨーロッパは衰退し、アメリカに追い抜かれる。そしていま、アメリカは中国に追い抜かれつつある。

 だが、実はそれらは成功した19世紀のヨーロッパに表面だけ似せる「擬態」だった。外側だけ似せて中身は違うもの。悲しいことに現代のヨーロッパはその米中の後追いをしているだけと著者は悲観的だ。

 新自由主義とポストモダン思想から脱却し、新しいグランドセオリーが必要という。19世紀のヨーロッパこそ最高の文明だったという確信が見え隠れする。

(PHP研究所 960円+税)

「ノヴァセン」ジェームズ・ラヴロック著 松島倫明訳

 ヒッピーと対抗文化の時代に「ガイア理論」を提唱し、環境問題に先鞭をつけた著者。本書は昨年7月に100歳になった彼の最新作だ。

 ガイア理論は環境主義の先駆とされたが、著者は技術文明を否定しない。エコロジストはしばしば、人類の技術革新が地球の生態系に根本から影響を与える「アントロポセン(人新世)」を敵視する。緑の党などはその例だ。

 しかし著者は原発を肯定し、プラスチックの有用性も認める。要は使い方だというわけだ。

 そして本書では人類の情報処理能力を上回るAIなどの「サイボーグ」がやがて人間の後継者になり、「超知能」(ノヴァセン)の時代になるという。

 それが人間にとって好都合な世かどうかはわからない。サイボーグが地球環境を改変して光合成を別のしくみに変えれば、地球の酸素はほとんどなくなるからだ。果たして未来の明暗は? スリリングな文明史。

(NHK出版 1500円+税)

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