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「ふくしま原発作業員日誌」片山夏子著

 感染症パンデミックにも実は環境問題が関係している!?

◇

「あの」3・11から早くも9年。新型ウイルス禍で世間の関心はコロナ一辺倒だが、実はフクシマ原発事故にともなう「原子力緊急事態宣言」はいまも続いている。

 本書は福島第1原発、通称「イチエフ」で被ばくにさらされながら仕事をする多数の作業員たちに取材したノンフィクション。フクシマ事故のルポは力みすぎな文章が多いが、本書は大げさなことばを避け、個々の作業員たちの語りにしっかり耳を傾ける。

 底辺労働者の巣窟などと思われがちだが、実はイチエフで働く動機はさまざま。事故が起こったとき、真っ先に手を挙げてフクシマ行きの派遣会社に登録したシンさん(47歳)。事故でイチエフから逃れたあと、小学生の息子から「父ちゃん。行って闘って」といわれたカズマさん(35歳)。放射線量を気にしながらもつい現場の作業に夢中になるというキーさん(56歳)。事故当時、現場を預かった吉田所長の思い出を語るケンジさん(40歳)……。

 行間から作業員たちとの深い絆が伝わる。東京新聞に連載されたコラムをまとめたものだが、単行本化にあたっては徹底的に手を入れたようだ。実は昨年、著者は咽頭がんと宣告されたという。そのときも親身になって声をかけてくれたのが取材先の作業員たち。450ページもある大冊だが、読後感はふしぎにすがすがしい。

(朝日新聞出版 1700円+税)

「地球に住めなくなる日」D・ウォレス・ウェルズ著 藤井留美訳

 米紙「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラー欄で1位という環境問題への警世の書。副題「『気候崩壊』の避けられない真実」が示すように、環境問題否定派への鋭い反論だ。

 著者は実はシロウト。田舎には縁がなく、キャンプもしたことがない。経済成長と自然保護は両立せずと信じ、自分なら「まず成長を選ぶ」と明言。しかし副編集長を務める「ニューヨーク・マガジン」の環境問題特集で同誌過去最高の閲覧数というヒットを飛ばした。つまり大都会ニューヨークのオシャレな文化にどっぷり染まりながらも環境問題が気になる人の代表として、環境問題を取材した成果が本書というわけだ。

 頻発する山火事、洪水、スウェーデンの少女グレタなど多数の話題が次々に紹介される。「地球温暖化で生態系がひっかきまわされると、病原菌は防護壁をやすやすと乗りこえる」。つまり今回の新型ウイルスも温暖化と無関係ではないかもしれないのだ。

 感染症を媒介する蚊の生息地は、温暖化で10年に直径50キロの勢いで拡大しているという。環境を気にしながらも「肉を食べ、飛行機に乗り、リベラルに投票」する都会人たちへの警告。

(NHK出版 1900円+税)

「再開発は誰のために?」竹居治彦著

 東京で最もオシャレな地区のひとつが代官山。もとは外国人向けの戸建てが並んでいた一角を、ある日、大手不動産が買収。やがてそこに大規模なマンションを建設する計画があがった。

 周囲の風景にそぐわない威圧的な外観だが、実は地元・渋谷区の行政にはひそかに手が回してあるらしい。やがて明るみに出たのはディベロッパーと行政の癒着だった。

 地元住民の一人として立ち上がった著者は、詳細な調査で渋谷区長と業者の因縁まで明るみに出してゆく。追及ぶりは徹底したもので、ついにマンションや不動産業者の実名入りの本書による告発となった。

 公徳心を忘れ、「欺罔」(だまし)と「浮利」(あぶく銭)に狂奔して生活環境を破壊する権力への挑戦だ。

(新評論 2400円+税)

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