「白蟻女」赤松利市著

公開日: 更新日:

 古希を目前にして夫が死んだ。通夜の夜、恵子は薄暗がりに白装束の夫が立っているのに気づいた。その背後から、白装束の女が「奥さん」と声をかけた。恵子の記憶の引き出しがカタカタ鳴った。

 白蟻女……。40年近く前、この女は恵子の家に上がり込んで、「一緒になれないんだったら死んでやる」と、白蟻の駆除剤を呷(あお)って自殺したのだ。

 白蟻女は夫との間にたった3カ月の思い出しかないのに、恵子には50年近い思い出があるのが納得できない。「思い出をめちゃめちゃにしてやる」と言うと、白蟻女は粒子になって恵子の中に流れ込んだ。

 気がつくと、恵子は新婚旅行の日に戻っていた。

 家族の死をめぐる2編の心温まる物語。

(光文社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  2. 2

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  5. 5

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  1. 6

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  2. 7

    レーダー照射問題で中国メディアが公開した音声データ「事前に海自に訓練通知」に広がる波紋

  3. 8

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  4. 9

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  5. 10

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」