北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「競馬にみる日本文化」石川肇著

公開日: 更新日:

 いやはや、面白い。舟橋聖一、菊池寛、吉屋信子、吉川英治ら作家たちがどのように競馬と親しんだのか、そのエピソードがてんこ盛りだ。さらに、その合間を縫うように、日本最初の競馬ミステリーが、大庭武年の「競馬会前夜」(昭和5年に「新青年」に掲載)であること。日本中央競馬会の機関誌「優駿」に初めて連載された競馬小説は、片岡鉄兵「美しき闘志」であること。井上靖にも「鮎と競馬」という競馬がらみの小説があること。遠藤周作「競馬場の女」は福島競馬場への愛にあふれた小説であること――そういう情報がどんどん飛び出してくる。

 これだけでも十分に面白いのだが、圧巻は第2章「競馬場の地図絵巻」だ。これは、吉田初三郎の鳥瞰図を紹介しながら、その地の競馬場とそれに関する作家、作品を紹介するというもので、読み始めるとやめられなくなる。吉田初三郎は大正の広重と呼ばれた人で、日本各地をはじめ、戦前の外地の都市や観光名所を描いた鳥瞰図絵師である。その特徴は独特のデフォルメにあり、日本の三重を描いても、はるか遠方にハワイがあったりする。吉田初三郎に競馬場を描く意図はなかったと思われるが、日本各地を鳥瞰図で描くと、当時はそこいら中に競馬場があったので、結果的には競馬場が描かれることになる。たとえば「甲府市鳥瞰図」には昭和3年から13年まであった甲府競馬場が描かれている。

 見ているだけで飽きない。快著だ。 (法藏館 2000円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    阿武町誤送金の7割「3500万円返還」で浮上した新たな謎…決済代行業者にも疑惑の目が

    阿武町誤送金の7割「3500万円返還」で浮上した新たな謎…決済代行業者にも疑惑の目が

  2. 2
    プーチン大統領「老兵&障害者」まで戦場投入の非情…ロシアの兵士不足が深刻に

    プーチン大統領「老兵&障害者」まで戦場投入の非情…ロシアの兵士不足が深刻に

  3. 3
    清野菜名が「トップコート」電撃移籍の真相 新田真剣佑の“隠し子騒動”封じた大手事務所の影響力

    清野菜名が「トップコート」電撃移籍の真相 新田真剣佑の“隠し子騒動”封じた大手事務所の影響力

  4. 4
    日本ハム清宮&万波スタメン外れ完封負け…改めて分かった“長距離砲”2人の存在感

    日本ハム清宮&万波スタメン外れ完封負け…改めて分かった“長距離砲”2人の存在感

  5. 5
    焦るロシア軍が投入した最新兵器「ターミネーター」は切り札か? 装備強力も実力は未知数

    焦るロシア軍が投入した最新兵器「ターミネーター」は切り札か? 装備強力も実力は未知数

もっと見る

  1. 6
    山口・阿武町4630万円誤送金「元ギャンブル狂」24歳男が単身で清貧生活を送っていたワケ

    山口・阿武町4630万円誤送金「元ギャンブル狂」24歳男が単身で清貧生活を送っていたワケ

  2. 7
    「ちむどんどん」に「教育上良くない」の批判も…4630万円誤送金・24歳男になぞらえてプチ炎上!

    「ちむどんどん」に「教育上良くない」の批判も…4630万円誤送金・24歳男になぞらえてプチ炎上!

  3. 8
    帰国への布石? ピース綾部“けちょんけちょん”の英語力は壮大なボケだったのか

    帰国への布石? ピース綾部“けちょんけちょん”の英語力は壮大なボケだったのか

  4. 9
    誤送金“使い切った”24歳無職男から「5116万円全額回収」は可能か? 月5万円返済でも85年

    誤送金“使い切った”24歳無職男から「5116万円全額回収」は可能か? 月5万円返済でも85年

  5. 10
    落語家ヨネスケさんは今…2015年に離婚し1人暮らし「結婚はもういい!」

    落語家ヨネスケさんは今…2015年に離婚し1人暮らし「結婚はもういい!」

人気キーワード