「星新一の思想」浅羽通明著

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 ショートショートの名手として誰もが知る作家・星新一。彼は知名度の高さに反して、長年批評の対象として扱われてこなかった。

 しかし最近、星作品の卓越した予見力に注目が集まっている。例えば「声の網」という作品には、忘れそうなものを保存でき、必要に応じて電話一本で取り出せる情報銀行というアイデアが描かれ、私たちがネットを通して得ているサービスが詳細に出てくる。本書は、こうした先見力に満ちた星新一の全仕事を読み解きながら、彼の思想を考察した一冊だ。

 著者は、彼の思想の根底に秘密というキーワードがあると指摘。大正生まれの星は、兵役回避のために視力を低下させようと長年、本を近づけて読むようにし、計画を見抜かれないよう射撃部に入ったということをエッセー「眼鏡について」で告白しており、この経験が作品に登場するスパイにも反映されていると著者はいう。

 さらに通常のSF小説では、残虐な世界を警告するディストピアが描かれるのに対し、星作品では正義を相対化する「価値観の相対化」が行われているともいう。星作品を改めて読み返したくなること必至だ。

(筑摩書房 2200円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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