「搾取都市、ソウル」イ・ヘミ著 伊東順子訳

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 韓国の首都ソウルには、貧困層が暮らす最底辺住宅「チョッパン」が数多く存在する。老朽化した建物の一室をベニヤ板などでさらに細かく仕切った劣悪な賃貸住宅で、広さは大人1人がなんとか体を伸ばせる程度。トイレもシャワーもない。ボイラーやオンドルが壊れても修理はされず、寒い冬は縮こまってひたすら耐えるしかない。映画「パラサイト 半地下の家族」で描かれた半地下の貧困住宅のほうがまだマシだ。

 ここで暮らす人の多くは、貧しさを強いられながら老いた独居老人。ホームレスにだけはなりたくないと、日雇い仕事のわずかな収入や基礎生活受給の中から家賃を払い、毎日を綱渡りのように生きている。

 著者のイ・ヘミは韓国の全国紙「韓国日報」の若手記者。取材で迷い込んだチョッパン街でソウルの暗部に直面する。なぜこんなエリアが存在するのか。ここの人たちはなぜこんな暮らしを強いられているのか。自らも貧しさの中で育った著者は、苦心惨憺しながらチョッパン街のカラクリを解き明かしていく。

 ソウル市が把握している全チョッパンの住所をなんとか入手、登記簿謄本から所有者を一件一件洗い出す。大家に見えたのは管理人で、実際の大家は「見えない」富裕層であることを突き止めた。チョッパン住人の人間的な暮らしは後回し。再開発計画を見越して不動産投資を行い、取り壊しを待つ間も家賃収入を得る。住人の基礎生活受給や家賃支援など、血税で私腹を肥やす。取材を積み重ねるうちに、金持ちオーナーによる貧困ビジネスの構造が見えてきた。

 きらめくネオンの陰に隠れた搾取都市ソウルの現実を描いた迫真のノンフィクション。貧しさは当事者の努力不足ではなく、構造的に生み出される。自己責任論が声高に語られている日本にとっても、他人事ではない。

(筑摩書房 1870円)

【連載】ノンフィクションが面白い

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