「オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン」サムエル・ビョルク著、中谷友紀子訳

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 北欧ミステリーの特徴のひとつに、陰惨な事件を背景に個性的な警察官が活躍する警察小説というのがある。ノルウェーのオスロ警察が舞台の本書もまさにこのパターンに当てはまる、王道の北欧ミステリーだ。

【あらすじ】オスロ郊外の森で木からぶら下がる6歳の少女の遺体が発見された。人形の衣装を模したドレスにスクールバッグを背負い、首には「ひとり旅をしています(アイム・トラベリング・アローン)」と書かれたタグがつけられていた。なんとも不可解な事件で、オスロ警察のミッケルソン本部長は、急きょ殺人捜査課特別班のホールゲル・ムンクを呼び戻すことにした。ムンクは、2年前に部下のミア・クリューゲルがある事件で容疑者を射殺したことの責任を取らされ地方へ左遷させられていたのだ。当のミアはある孤島に引きこもり、10年前に亡くなった姉を追って自らの生を終わらせようとしていた。

 ムンクの復帰の誘いを最初はかたくなに拒否していたミアだが、少女の左手の小指の爪に数字の「1」が刻まれている写真を見て、もしや連続殺人の予告か、と眠っていた刑事の魂が呼び起こされる。ミアはムンクのチームに加わるが、予想通り、同じように幼女が吊るされた第2の殺人が発覚する──。

【読みどころ】少女の教科書に残された謎の言葉、鷲のタトゥーの男、青と茶の瞳を持つ女性、謎の宗教団体……事件は多くの謎をはらみながらさらなる連続殺人へと発展していく。有効な手がかりを求めようと奮闘するムンクとミアのチームをあざ笑うかのように狡猾(こうかつ)な犯人は警察を翻弄する。いくつもの視点を小刻みに切り替えながらも、最後まで緊張感を持続させていく手腕は、脚本家でもある著者ならでは。

 <石>

(ディスカヴァー・トゥエンティワン 1760円)

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