著者のコラム一覧
山上たつひこ

1947年、徳島県生まれ。70年「光る風」で注目され、72年「喜劇新思想大系」でリアルな画風のギャグを確立。74年連載開始の「がきデカ」が社会的ブームに。88年から小説執筆を開始。2014年、原作を担当した「羊の木」(いがらしみきお画)が文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。著書に「蝉花」「火床より出でて」「大阪弁の犬」「王子失踪す」ほか。

(90)骨壺を抱えたクルシマが粉塵となって散る

公開日: 更新日:
イラスト とり・みき

 タキグチは車から降りたところだった。

「やあ、これはこれは。朝早くから要人殿のお出ましだ」

 綾瀬は足元をふらつかせて玄関口の階段を下りた。芝居ではなく実際にまだ体が揺れている。

「朝酒ですか」

 タキグチの表情は厳しかった。

「朝酒というより昨夜… 

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